国立感染症研究所と厚生労働省は15日、2017/18シーズンのインフルエンザの発生動向をまとめた報告書を厚生科学審議会感染症部会に提出した。今シーズンの患者数は統計を取り始めた1999年以降最多となったが、患者数が増加した要因として報告書は、複数のインフルエンザウイルスが同時に流行する「混合流行」であったことが影響した可能性を指摘した。
報告書は、2017/18シーズンのインフルエンザ発生状況に関して、疫学的およびウイルス学的観点から公衆衛生上有用と思われる知見をまとめたもの。
報告書によると、累積推計受診患者数は約2249万人。2017年第45週(11月6~12日)よりAH1pdm09亜型が増加傾向を示したが、第48週(11月27日~12月3日)よりB型が増加し、さらに年明け頃よりAH3亜型も増加するなど、混合流行となったことが患者数の増加に影響を及ぼしていた可能性があると分析した。
入院サーベイランスに報告された症例数は前シーズンと比較してすべての年齢群で増加し、60歳以上では約2倍の報告があった。入院時の医療対応の割合をみると、全年齢群で前シーズン、前々シーズンと同程度だった。
報告書では、インフルエンザの流行規模とインフルエンザワクチン供給の関係についても記載。「これまでに国内外で季節性インフルエンザワクチンの供給がインフルエンザ流行の規模に影響を及ぼしたという報告がない」と説明した上で、「インフルエンザワクチン供給開始が前シーズンに比較して遅れたことが今シーズンの流行拡大の要因となった可能性は否定的」と評価した。
感染症部会ではワクチン供給の遅れと流行の関係について「全然関係ない、ということはないのではないか」(釜萢敏委員・日本医師会)と異論が示された。これに対し厚労省は「報告書の表現は、ワクチン供給の遅れによる現場への影響をエクスキューズしたいわけではない」としつつ、「(インフルエンザワクチンは)重症化予防、発症予防の効果はあるが、感染そのものの予防効果はない。インフルエンザワクチンが定期接種から外れていた時期があるが、その時にインフルエンザが爆発的に大流行したということはなく、インフルエンザワクチンと流行の規模は必ずしも相関しない」と回答した。
報告書は国立感染症研究所のホームページに掲載されている(https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1718.pdf)。