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花火大会とベートーベン交響曲第9番[エッセイ]

No.4917 (2018年07月21日発行) P.68

井奈波良一 (岐阜大学大学院医学系研究科産業衛生学分野准教授)

登録日: 2018-07-22

最終更新日: 2018-07-17

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秋田県大仙市大曲地区で開催される全国花火競技大会は、識者の間で日本で最も権威のある花火競技大会として位置づけられている1)。2016年の大曲全国花火競技大会は90回の記念大会ということで、「歓喜」をテーマにベートーベン作曲交響曲第9番第4楽章のメロディーに合わせて約2400発打ち上げられた2)。第9番が選ばれたのは、第90回の記念大会の「9」にちなんでのことという2)

大会当日の模様がNHK BSプレミアムで生放送されたため、ビデオに保存し、テレビで何度も視聴した。テレビ画面からも花火のど迫力と観客の感動の嵐が十分すぎるほど伝わり、何度見ても見飽きることはなかった。

天野ら3)4)は花火大会鑑賞者を対象に、花火を見て得たもの等のアンケート調査を実施し、「感動」「明日への活力」「ストレス解消」「爽快感」「夏の実感」とともに「コミュニケーションの一体感」との回答を得ている。また、筆者は最近、花火大会の効用等に関する調査を開始した。医学部学生を対象にした調査では、「花火大会で、花火を見て得たものは何か」という問に対し、因果関係は明らかではないが「同行者間の一体感」は、ここ1年間に花火大会に行った回数が多いほど高率であった。また、「会場での一体感」は、花火大会に行ったことがある者がない者より高率であった5)

半澤6)は、音楽には、国境を越えるコスモポリタンなところがあると述べている。ベートーベン交響曲第9番第4楽章の「歓喜の歌」の旋律が「EUの歌」と定められている6)が、EU諸国の一体感を高めるために採用されたのかもしれない。日本では、師走の恒例行事としてこの曲を歌う会が各地で開催されているが、一体感を味わうことができるらしい7)。宇都宮第九合唱団の神尾典彦氏は、人々が自由・平等の精神で心を一つにしてことにあたろうとした時にこそ「第9」が登場してくる、と述べている。

以上から、ベートーベン交響曲第9番第4楽章のメロディーに合わせて花火を打ち上げれば、会場での一体感が否応なしに高まると考えられる。

そこで、筆者がYouTubeで「花火」「ベートーベン交響曲第9番」を検索語として、花火打ち上げの動画映像を検索したところ、2007年7月~17年6月の間に11回、この曲に合わせて花火が打ち上げられていた。いずれにせよ、2016年の大曲全国花火競技大会での「歓喜」が最高であった。

【文献】

1) 大曲の花火について.
[http://www.oomagari-hanabi.com/hanabi.html](参照 2017-09-04).

2) <大曲花火>90回目テーマは「行雲流水」, 河北新報 2016年8月29日.

3) 天野安喜子, 他:2007年度春季火薬学会年会講演要旨集.2007:133-4.

4) 天野安喜子, 他:ミレニアム. 2005;17: 2-4.

5) 井奈波良一, 他:健レクリエーション研. 2017;13: 1-10.

6) 半澤朝彦:国際学研究. 2011;39:107-19.

7) サントリー1万人の第九:参加者の声.
[http://www.mbs.jp/daiku/voice/](参照2017-09-04).

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