私は認知症専門医です。2017年4月から、神奈川県平塚市認知症初期集中支援チームの認知症サポート医として活動しています。支援チームとは、40歳以上で、在宅生活の認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期支援を包括的、集中的に行い、自立生活のサポートを行います。平塚市では、2018年6月末までに、56件のケースに対応しました。この数は、全国的にみてもかなり多く、平塚市の13の地域包括支援センターの皆さま方の努力の賜物であると思っています。
チーム員としての対応ケースの中で、とても印象に残っているのは、喫茶店のオーナーで80代の女性の方です。彼女の店には2回ほど行き、美味しいサイフォンコーヒーを飲ませていただきました。彼女は、認知症がありながらも、亡くなる直前までお店に立ち続け、常連客に愛されました。一方で、非常に劣悪な住環境の中に身を置いている認知症の方たちもいました。ウジがわいていたり、ゴキブリが闊歩したりする部屋などもありました。これに介入するには、単に医療や介護だけではなく、住環境から整える必要があると思いました。経済的困窮による場合もありますが、ご家族の認知症に対する理解不足も原因の一端であり、「もし早期介入できていたら」という気持ちを強くし、認知症啓発活動の重要性を再認識しました。
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