先日、東京を歩いていたところ、電動キックボードを利用している人を見かけました。若い方が乗っていましたが、ヘルメットは着用していませんでした。このような電動キックボードにはシェアリングサービスがあるようで、今後もさらに普及することが予想されます。
しかし、この電動キックボードでの事故が散見されており、転倒による頭部外傷で死亡した例も報告されています。医療現場でも電動キックボードについての知識が必要になってきました。
2023年に改正道路交通法が施行され、電動モビリティの新たな車両区分として特定小型原動機付自転車(特定小型原付)が定められました。この区分では、長さが190cm以下、幅60cm以下の車両を最高時速20kmで運転できます。16歳以上であれば運転免許は不要です。ヘルメットの着用は努力義務です。ナンバープレートと自賠責保険への加入が必要とされ、車道や自転車道を走行します(歩道は走行禁止)。
ちなみに、特例特定小型原動機付自転車という区分もありますが、時速6km以下で最高速度表示灯を点滅させることで一部の歩道の通行が可能になっています。
特定小型原付であっても、車両であることに変わりはないので、携帯電話の使用や酒気帯び運転などは禁止されています。
警察庁が2020~23年までの間に発生した電動キックボードによる人身事故76件を分析したところ、81%が東京都、大阪府、神奈川県で発生していました。これは、電動キックボードのシェアリングサービスが都市部で展開されているという背景によります。負傷者は78人、死者は1人でした。なお、電動キックボードのシェアリング大手2社の稼働台数は2024年7月時点で約1万5000台とのことです。
また、警察庁が2024年1~6月に全国で発生した電動キックボードに関する事故を調べたところ、17%が飲酒運転であったそうです。同時期に起きた自転車や原付バイクの事故では、飲酒運転の割合が約1%ですので、はるかに高率であることがわかります。
電動キックボード関連の外傷で病院を受診した人を対象にした調査によると、受傷部位として頭部および顔面が圧倒的に多く(85%)、さらに、全体の15.4%の人は頭部外傷による緊急手術を受けていました。頭部外傷による死亡例もありましたが、ヘルメットは着用していませんでした。そして、38%が飲酒運転でした。その気軽さから、操作に不慣れな状態で運転をする、酒気帯び運転をする、という背景があるようです。
しかし、走行場所によっては段差などがあり容易に転倒しやすいこと、立ち乗りであるため、転倒時に頭部や顔面に大きな加速度が作用し、重症頭顔部損傷を負いやすいことなども考えられます。法律が努力義務であるので、おそらく多くの利用者はヘルメットを着用していないでしょう。
電動キックボード利用中の外傷で搬送されてくる患者さんがおられると思います。重症損傷を見逃さないよう、ご準備をお願いします。