最近、小児外科医をモデルにしたテレビ番組「グッドドクター」(フジテレビ系列)が人気だ。しかしながら、現状は少産少子の時代で、小児医療、中でも小児外科医療を取り巻く環境は厳しい。
私は1982年に大学卒業後、小児外科医療を新潟大学で志し、2005年より久留米大学に移り、現在も新生児外科を中心とする小児外科医療を実践中である。2017年より病院長を拝命し、担当診療科のみならず、病院全体を俯瞰する大役を仰せつかっている。
私の所属する日本小児外科学会では、全国の小児外科施設に新生児外科の実情を把握するため、1964年以降、5年ごとに全国アンケートを実施している。私が2013年から日本小児外科学会学術担当理事として2013年のアンケートを担当し、2018年のアンケートからNCDデータを利用した形式に変更されるので、現体制での過去20年間(5回分)のアンケート結果をまとめる機会を得た。回答率は毎回80~90%で、集計できた新生児外科症例数は総数1万7199例(5年分)で、実勢を反映するデータである。
わが国の人口は1964年より2013年において30%増加を示したものの、20年前の1993年に比べて2%と微増で、ほぼ横ばい状態であった。一方、出生数は1973年頃をピークに減少し続け、2013年は統計開始時1964年の60.0%となり、1993年以降の過去20年では、2013年の出生数は1993年の86.7%まで減少していた。出生数の減少にもかかわらず新生児外科症例数が2003年にやや減少したものの、2013年では20年前の1993年より33.7%の増加が認められており、少なくとも減少していないことは、出生数に対して新生児外科疾患の割合が増加していることがわかった。
超低出生体重児の割合は2.7%(1993年)、3.8%(1998年)、6.7%(2003年)、8.7%(2008年)、9.9%(2013年)と年率0.39%で直線状に有意に増加していた。母体搬送例の死亡率は22.7%(1993年)、15.8%(1998年)、16.2%(2003年)、10.2%(2008年)、11.7%(2013年)と年率0.55%で直線状に有意に減少していた。
超低出生体重児(<1000g)の死亡率は48.1%(1993年)、35%(1998年)、29.2%(2003年)、21.4%(2008年)、13.7%(2013年)と年率1.68%の有意な直線状の減少を示していた。
主要な新生児外科疾患全体の死亡率は1993年には12%であったが、2008年には7.5%まで減少し、さらに2013年には6.6%まで減少しており、主要な新生児外科疾患全体の死亡率は年率0.26%の有意な直線状の減少を示していた。詳細は[Yagi M, et al: Pediatr Surg Int. 2015;31(10):955-62.]をご覧頂きたい。
以上から、わが国における新生児外科症例数は少産少子の時代ではあるが、確実に増加し、著明な手術成績の向上が窺え、病院を統括する立場からも、小児外科医はニーズの向上に答えているグッドドクターであることを力説したい。