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「医師の働き方改革」を問う[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.10

大西 真 (国立国際医療研究センター病院病院長)

登録日: 2019-01-01

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この1年、「医師の働き方改革」の議論が喧しくなっている。病院の現場に次々と労働基準監督署が入り、超過勤務の是正勧告がなされることにより、勤務状況の膨大な資料の提出、莫大な金額の手当ての追加支給等の対応に追われ、皮肉なことに、まさに過重労働に陥っている。働き方改革の具体的な対応は、地域によって、また病院の規模によっても大きく異なり、一律のルールは決められない現状がある。

私が病院長を務める病院では、臨床研修医等の勤務は17時15分で終了とし、その後は自己研鑽として自主参加型の様々な教育プログラムを提供し、救命救急センターでの研修期間も長くした。また、回診やカンファランス、インフォームドコンセント、院内会議等はすべて平日勤務時間内に行うこととした。ICU等以外の当直は原則廃止し、時間外の診療は救命救急センターに一本化し、ターミナルの患者のお看取りは管理当直の業務とした。変則勤務や交替勤務を可能とし、診療体制として複数主治医制やチーム制を徹底した。バックアップ待機、自己学習、研究については超過勤務の対象とはしないこととした。

常勤医師、フェロー医師、レジデント医師については、時間外に手術・処置等を実施した場合は超過勤務手当を支給し、時間外に、診療科長による診療に関する業務命令があった場合は超過勤務の対象とすることとした。

これらの具体策の結果、臨床研修医の超過勤務は激減したが、上級医であるレジデント医師やフェロー医師にしわ寄せが行き、超過勤務が増加した。そのため、タスク・シフティングを推進し、ドクターズクラークも導入した。

現在、厚生労働省等を中心に様々な議論がなされ、宿日直、自己研鑽、応召義務、時間外労働の上限時間数の設定等が大きな検討課題となっている。あまり細かな規程をつくると自ら首を絞めることにもなりかねず、本来の医師としての根本的な心構えを忘れてはならない。

その上で、ワークライフバランスを取り、業務時間外は医師としての自己研鑽に充てることこそが「医師の働き方改革」の主旨であると思う。

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