【会話分析で相互行為を読み解く】
医師患者関係や解釈モデル,生活の質など当該者の主観情報は心療内科臨床で特に重視されており,その研究には質問紙で数値化されたものや,面接やインタビューの記録のように数値化されていないものが利用される。後者では,まず言語情報のコーディングを行った上で,個々の要素の出現状況を数的に評価する量的研究として,Roter interaction analysis systemやテキストマイニングがある。また,個々の要素の関係性からその背景にある概念や被験者の主観を明らかにする質的研究として,KJ法やグラウンデッド・セオリー・アプローチがある。
さらに近年,会話上の相互行為を分析する会話分析を用いた報告が増えている。発話によって当事者が達成している社会行為に注目した質的研究法であり,コーディングを用いないことで会話を構成する多くの要素を,できるだけ漏らさずに客観的な分析対象とすることができ,量的研究への応用も可能である。
感冒症状で患児とともに親が小児科を受診する場面では,治療への質問をする親や,自己診断を伝えてくる親に対して,医師は抗菌薬処方要求を感じることが多く,医師が正常所見を伝えながら身体診察を行うことで,不必要な抗菌薬処方を減少させていることが報告されている1)。
このような診療場面での関係性の分析や,医療面接の振り返り教育などへの応用が期待される。
【文献】
1) Heritage J, et al:Patient Educ Couns. 2010;81 (1):119-25.
【解説】
阿部哲也 関西医科大学心療内科講師