【2-ノネナール発生を抑制し,身体を清潔に保つことで軽減できる】
加齢臭は,主に40歳代以降の男性や閉経後の女性にみられる特有の体臭の俗称で,青臭さと脂臭さを併せ持つ臭いであると言われています。
加齢臭の原因物質は,皮脂に含まれるパルミトレイン酸のようなω-7不飽和脂肪酸が酸化分解されることで発生する2-ノネナール(C9H16O)であることが明らかとなっています1)。また,2-ノネナール発生の原因となる9-ヘキサデセン酸は,分解されるとチーズや古本のような臭いがするといわれています。
2-ノネナールの発生源となる皮脂の分泌は男性ホルモンにより亢進することから,加齢臭は男性のほうが強いといわれています。日本人は他の民族に比べて体臭が少ないとされていますが,近年では食生活の欧米化(動物性脂肪摂取の増加)により,加齢臭が発生しやすい状況になっていると考えられています。また,アルコールから生成されたアルデヒドも2-ノネナールの原料となっていることから,多量の飲酒は加齢臭を強める原因になると考えられます。加齢臭を抑制するためには,動物性脂肪食品やアルコールの摂取を控えることに加えて,抗菌薬やミョウバン溶液を用いて身体を清潔に保つ,消臭加工された衣類を着用するなどの工夫をすればよいでしょう2)。
入浴も加齢臭に対する対処法のひとつですが,身体を擦ることで皮脂を過剰に除去してしまうと,肌を乾燥させるのみならず,高齢者では皮膚疾患を誘発する危険性が高まるので注意が必要です。微細な気泡を浴槽内に供給させて行う「マイクロバブル入浴」は加齢臭の抑制に効果的な入浴方法です3)。
【文献】
1) Haze S, et al:J Invest Dermatol. 2001;116(4): 520-4.
2) 合津陽子, 他:日本化粧品技術者会会誌. 2000;34 (4):379-86.
3) 西村直記, 他:日生気象会誌. 2013;50(2):107-15.
【回答者】
西村直記 日本福祉大学スポーツ科学部准教授