日本学術会議の生物リズム分科会(委員長=近藤孝男名大名誉教授)は7日、夏の標準時刻を1~2時間早めるサマータイムの導入について「多くの国民の健康を危険にさらすべきでない」として、見送るべきとする提言を公表した。自民党内の研究会は既に、2020年東京五輪・パラリンピックの暑熱対策としての導入を時間的制約から断念しているが、検討自体は継続するとしており、提言は将来的な導入にも反対を表明した形となっている。
提言では、サマータイムの導入により、生物時計の機能を損ね、睡眠不足に伴う睡眠障害と急性心筋梗塞の発症率を高めると指摘。諸外国に比べ睡眠時間の短い日本での導入は、健康障害を増加させる可能性が高いと警鐘を鳴らした。生活時間が早まることによって、帰宅・下校時間帯の気温や就寝時間帯の室内温度が上昇することから、暑熱対策としての効果も疑問視。家庭内熱中症のリスクが高まり、特に乳幼児や高齢者では、本人も家族も気付かない睡眠中の「隠れ熱中症」が増大する可能性が大きいとしている。
東アジアでサマータイムを導入している国はなく、欧州では廃止の検討が進んでいる状況を踏まえ、国際交流の観点からも「好ましい制度とは思われない」と強調した。