医療技術の高度化や専門分化が進む中で、あらゆる疾患に対して的確な医療を提供することのできる総合診療医の重要性が強調されている。昨年9月に日本病院総合診療医学会第19回学術総会を佐賀市で開催した。学会が創設されて10年の節目の年に「Hospitalist2019─10年の軌跡と切り拓く未来」を総合テーマに講演やシンポジウムなどを行ったが、予想をはるかに上回る参加者があり、大変な盛会となった。
総合診療医はどんな症状の患者さんが来られても、ある程度の診断と治療を行うことのできる知識を持った医師である。もちろん、専門的な治療が求められる場合は専門医に依頼あるいは連携するが、かなりの範囲の疾患、特に一般内科領域の疾患の診断と治療を総合診療医が行う。いわゆる総合診療医は、初療を中心に担当するプライマリ・ケア医、患者さんの家庭環境まで把握して寄り添う家庭医、病院での診療にあたる病院総合診療医、の大きく3種類に分類されるが、中でも病院総合診療医には重症の患者さんを診る力が求められる。
「どんな患者が来ても断らず、何でも引き受けてしっかり診る」というのが一番のアイデンティティーであり、領域にこだわらずに全般的に診ることができる医師が総合診療医である。真の総合診療医となるためには、どうしても病院総合診療医のトレーニングが必要となる。
佐賀大学の総合診療部は、通常の内科外来のみならず、24時間、365日、救急車で運ばれてくる患者さん以外はすべて診る。重症の人はICUに入ることもあるが、こういう患者さんも専門診療科の担当とならない場合は総合診療部のスタッフが担当する。
高齢化が進む中で、今後、総合診療医の果たすべき役割はますます大きくなる。本学会の会員も2000人に近づいている。昨年は学会創立10周年の節目であり、総合診療における先進的な診断・治療に関する知識と情報の共有はもちろん、救急医療や高齢者医療、医療体制などについて幅広く議論できたことは大きな喜びであった。未来を見据えて、病院総合医のみならず、総合診療医の全体像を示すことができたと考えている。