社会保障審議会医療保険部会は3月26日、政府の「改革工程表2019」の検討項目などについて議論した。このうち金融資産の保有状況を考慮した負担のあり方では、検討に前向きな声がある一方で、マイナンバーの活用を含めた環境整備を先行すべきではないかと指摘する意見も目立った。
改革工程表関係でこの日の議題となったのは、▶金融資産などの保有状況を考慮に入れた負担のあり方、▶保険給付率と患者負担率のバランスなどの定期的見える化、▶今後の医薬品などの費用対効果評価の活用―の3項目。金融資産の把握では、2018年1月から預貯金口座をマイナンバーと紐付けして預貯金情報を照会できるようにする取り組みが始まっており、工程表はこの仕組みを医療保険における負担能力の判定に活用することを、「骨太の方針2020」に向けた検討課題に位置付けている。
厚生労働省が部会に提出したデータによると、後期高齢者世帯の平均貯蓄額は1096万円。貯金額の分布状況では、「貯蓄がない」に次いで「3000万円以上」の世帯が多く、ともに全体の約1割を占める。世帯主の年齢階級別の貯蓄現在高(2人以上の世帯)でも、40歳未満世帯の600万円に対して、高齢者世帯は60〜69歳が2327万円、70歳以上が2249万円と高いが、負債現在高は逆に40歳未満が1248万円で最も高く、それ以降は年齢階級が高くなるに従って低くなる。
議論で、佐野雅弘委員(健康保険組合連合会副会長)は、「年齢ではなく、負担能力に応じた負担であるべき。後期高齢者の負担割合を考える時も、そうした点を考慮していく必要がある」と主張。横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長/多久市長)もこれに賛同したが、「経済や意欲のシュリンクにつながってはいけない」とも述べた。「金融資産だけでなく、不動産も含めてきちんと把握できる仕組みを作ってからでないと難しいのではないか」(安藤伸樹委員・全国健康保険協会理事)といった意見もあった。
残り2項目のうち、医薬品や医療材料の費用対効果評価については、当面、中央社会保険医療協議会での審議を見守ることで一致。保険給付率と患者負担率のバランスに関しては突っ込んだ議論に至らなかった。
この日は、傷病手当金と任意継続被保険者制度についても議論した。傷病手当金では制度によって異なる支給期間を共済組合に合わせて一本化することを支持する意見が大勢を占めた。現行制度で共済組合の支給期間は、一時的に職場復帰した期間(不支給期間)は考慮せず、支給期間だけを通算して1年6カ月と定められているが、健康保険は、不支給期間も含め、「支給開始から1年6カ月を経過する時点まで」という違いがある。
任意継続被保険者制度では、加入要件である勤務期間(現行は2カ月以上)の延長や、加入期間を現在の2年間から1年間に短縮化することを求める意見などが出た。