【カテーテル関連血流感染症に対するエタノールロック療法(ELT)の最新知見】
小児の中心静脈カテーテルの管理において,カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は大きな問題である。CRBSIに対する治療として,近年エタノールロック療法(ELT)の有用性が報告されている。これはカテーテル内に高濃度エタノールを充塡し,それによりカテーテル内腔に形成されたバイオフィルムを破壊し,菌の抗菌薬感受性を問わずに高い抗菌作用を示すというものである。
筆者らはELTについてCRBSIの治療だけでなく,予防としての新たな使用を開始した。その報告1)では,4名の腸管不全患者(男児:1名,女児:3名)を対象に,ELTで治療のみ行った治療期と,治療と予防を行った予防期の2期にわけ,両期におけるCRBSIの発症率,カテーテル交換率を比較した。予防的なELTは,毎月の定期外来受診時にカテーテル内に2時間エタノールを充塡して行った。
結果は,CRBSIの発症率について有意差はないものの,予防期で少なく,カテーテルの交換については,予防期で有意に減少した。これによりELTの二次予防効果の可能性が示された。しかし,最近の研究2)では,ELTの治療および二次予防効果について否定的な報告もあり,今後もさらなる症例の蓄積と検証が必要と考えられる。
【文献】
1) Kawano T, et al:Pediatr Surg Int. 2016;32(9): 863-7.
2) Wolf J, et al:Lancet Infect Dis. 2018;18(8): 854-63.
【解説】
馬場徳朗 富山県立中央病院小児外科
家入里志 鹿児島大学小児外科教授