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【識者の眼】「専門研修のオンライン化で興味深い変化」吉田 伸

No.5022 (2020年07月25日発行) P.53

吉田 伸 (飯塚病院総合診療科)

登録日: 2020-07-13

最終更新日: 2020-07-13

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前回(No.5016)は総合診療専攻医たちの研修オリエンテーションについてお話した。本日はその後日談である。

今年度の総合診療専門研修では去年までと違い、研修のオンライン化が急速に進んだ。 その背景として、全国に拡大した新型コロナウイルス感染により、研修行事の対面開催が難しくなったことがある。当プログラムは毎月第三土曜日の午前に「レジデントデイ」という研修を設けており、専門研修に必要なポートフォリオ(経験省察研修録)の発表と助言や、研修に役立つ指導医からのレクチャーを実施していた。しかし、これが感染対策上は集合行為になってしまうため、2020年3月からZOOMによるビデオ会議システムでの開催に切り替えた。

ところが、3カ月も続けていると少し寂しい。もともと総合診療はローテーションの多い専門研修である。したがって、たまのレジデントデイで同輩や先輩後輩と会い、そのまま昼食に出かけたりして、お互い元気かー? と仲間意識を醸成できた側面があったのかもしれない。

ただ一方で、興味深い変化もある。正直、以前より参加者が増えた。今までは朝8時半の開始時刻に遅刻する者を注意したり、事前の欠席連絡を促したりとやきもきしていたが、今は開始時間から5分もすれば、画面に専攻医がみな登場する。そう、病院に来る必要がなく自宅参加できるからである。

もうひとつ、チャットがある。誰かのレクチャー中でも、チャットで質問したり、それに演者以外の専攻医や指導医が答えたりと、同時並行で議論が進められていく。総合診療学(家庭医療学)には抽象概念が多いので、“これはいったいどういうことか” “自分たちのどんな経験にあてはまるのか”といった議論がされるほど、個々の概念がその集団に合った言葉として修飾され、集団知を形成していく。これを見るのは面白い。

さらに、レクチャーやディスカッションの全てが簡単に録画可能である。諸々の事情で参加できなかった専攻医の復習用に、また、当プログラムを志す若手医師への勧誘に転用するために、私も「職人」となり、レジデントデイの動画をYou Tubeに内部限定公開しはじめている。まだ“むちゃんこ役に立ったー”という声を聞けるほどではないが、こういったチャレンジは必要な時代になったと考えている。

次月は、もう一つの研修環境のオンライン化である、研修の進捗管理と記録について話そうと思う。

吉田 伸(飯塚病院総合診療科)[総合診療指導医奮闘記⑥]

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