病院勤務時代、診療録の患者職業欄に「会社員」と書くことが多かった。今でも多くの病院で会社員という職業記載があるだろう。自分の親の職業を問われて、「普通の会社員」と答えたこともあった。それが、産業医を専門として、職業性曝露や業務起因性の健康影響などを気にするようになると、「会社員」は職業なのか大いに疑問を持つようになった。
広辞苑によれば、会社員とは「会社に勤めている人」である。しかし、「厚生労働省編職業分類(2011年)」〈http://www.jil.go.jp/institute/seika/shokugyo/〉では、11の大分類と73の中分類と369の小分類に分けられており、そこには「会社員」という職業は存在しない。この分類を筆者が所属する事業場で数えてみたら、大分類4種(管理的職業、専門的・技術的職業、事務的職業、生産工程の職業)があり、その中に中分類18種の職業が存在することが判明した。
つまり、これだけ多彩な職業を病院では「会社員」と一括りにしていることになる。有害要因曝露もストレスも疲労も勤務形態も、業務によってまったく異なるのだが、それを総称しているのだ。
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