ヒルシュスプルング病は,先天的に直腸から口側へ連続的に腸管壁内の神経節細部を欠如する疾患である。無神経節部の腸管では蠕動がなく,腸管内容物の排出が困難となる。
多くの症例では胎便排泄遅延・腹部膨満・便秘の原因精査となるが,腹部単純X線写真で本疾患を疑う場合には注腸造影を行う。注腸造影で疑わしい所見があれば,直腸部肛門反射試験と粘膜生検を行う。
腹部単純X線検査:拡張した腸管と肛門側・骨盤腔内の直腸ガスの欠如から本疾患を疑う。無神経節腸管部位が長い症例や減圧が不十分な症例では,小腸の拡張像がみられる。
注腸造影:無神経節腸管の部分では腸管拡張が不十分で,正常腸管との間でcaliber changeを呈する。short typeの無神経節細胞を証明するには,浣腸等にて十分な減圧後に造影を行う必要がある。バルーンは使用せず,頭低位としてチューブを拡張部腸管まで挿入してから圧をかけずに造影剤を緩徐に注入する。
直腸肛門反射試験:ヒルシュスプルング病では陰性となる。陽性の場合にはヒルシュスプルング病を否定できるが,陰性の場合でも日齢,経過を考慮して必要な場合には再度検査を行う。
粘膜生検によるコリンエステラーゼ活性上昇の確認:ヒルシュスプルング病では外来神経の終着点となる神経叢が存在しないため,外来神経が粘膜側へ増生した結果,コリンエステラーゼ活性が上昇する。
粘膜生検でのコリンエステラーゼ活性上昇と直腸肛門反射陰性を確定診断として根治術を行うが,ヒルシュスプルング病類縁疾患が疑われる場合には,全層生検にて神経節細胞の正常・欠如・減少を病理診断する必要がある。
long segmentやextensive aganglionosis症例でコリンエステラーゼ活性の上昇が確認できない場合には,全層生検を考慮する。
待機手術が可能な場合には体重5~6kgで根治術を予定する。
根治術までは浣腸・ガス抜きで消化管の減圧に努め,減圧不十分な症例では母乳や人工乳の代わりに経腸栄養剤を併用もしくは代替使用し,便量を減らし減圧する。
無神経節腸管が長く減圧困難な症例では,入院下に肛門的に持続減圧チューブを挿入し減圧・洗腸する。無効な場合には腸瘻・人工肛門造設もしくは早期根治術を考慮する。
術前の腸管処置は,手術前日朝から絶食とし経鼻胃管から腸管洗浄液を用いるが,洗浄液投与中には腹部膨満が増強し減圧が不十分になる症例もあり,腸管洗浄液投与中は厳重なモニタリングが必要である。
術直前には手術時の肛門内操作を容易にするために,粘膜損傷に注意しブジーで18Frを目安に肛門を拡張する。
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