【質問者】
山末英典 浜松医科大学医学部精神医学講座教授
【開かれた質問による面接を通じて苦悩や不満を傾聴し,解決すべき課題を浮き彫りに】
2020年2月19日未明,客船ダイヤモンド・プリンセス号(DP号)の乗客32人を乗せた最初のバスが開院前の藤田医科大学岡崎医療センターに到着しました。その後,2月26日までの間,128人の新型コロナウイルス無症状病原体保有者およびその濃厚接触者を受け入れました。肺炎疑いの人を他の医療機関に移送しつつ最大時には106人が滞在し,3月9日までに全員が無事退所しました。職員に1人の二次感染者も出すことなく任務を達成できたのは,滞在者の協力,地元住民・企業・自治体・政府の支援のおかげです。
現地対策本部から精神科に支援要請が入ったのは,受け入れ2日目の2月20日。当初のニーズは,多国籍・多言語の滞在者をワンフロア1人の看護師で対応しているため,滞在者の話を聴いてほしいというものでした。その日のうちに幹部が協議し,情報収集のためにコーディネーター役の精神科医を現地に派遣しました。現場から直接情報を得た結果,①滞在環境はインフラ・物資ともに充実していること,②滞在者の精神面を含めた健康状態は安定していること,③受け入れ決定から開始までの約48時間の間に急遽,派遣を命じられた看護師のメンタル面・環境面での疲弊が増していること,が明らかとなりました。そこで精神科は,最前線にいる看護師全員への精神保健面接という支援者支援プランを対策本部へ提案しました。
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