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排便機能を見据えたヒルシュスプルング病の根治術

No.5033 (2020年10月10日発行) P.47

大西 峻 (鹿児島大学小児外科)

家入里志 (鹿児島大学小児外科教授)

登録日: 2020-10-11

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【経肛門手術(TA)は開腹手術に比べ術後7~9年の便汚染や失禁が多い】

ヒルシュスプルング病は,肛門から連続する腸管神経節細胞の欠損のために引き起こされ,機能性の腸閉塞症状(胎便排泄遅延,腹部膨満,胆汁性嘔吐など)で発症する。病変の範囲は下部直腸からS状結腸までの「短域型」が症例の8割を占めるが,全結腸および小腸まで病変が広範囲に及ぶ症例もある。

治療は無神経節腸管の外科的切除であり,正常な排便機能の獲得を目的として様々な手術方法が開発されてきた。無神経節腸管へのアプローチ法として開腹手術が行われていたが,1995年に腹腔鏡手術が報告され,99年には経肛門的にアプローチする経肛門手術(TA)が報告されている。

TAは腹壁に手術創が残らず,整容性に優れた術式として広く行われている。短域型ではTA法単独,病変が広範囲に及ぶ病型では腹腔鏡手術と組み合わせて行われる。近年では術後長期排便機能が報告されており,TAと開腹手術での比較では,TAを施行された患児では開腹に比べて,術後7~9年での便汚染や失禁が多かった1)。TAでは視野確保の際に肛門を伸展させるため,直接的に肛門括約筋が障害されることが原因として考えられた。術後12年では,両術式とも満足のいく排便機能が得られていた。

排便機能はQOLに大きく影響を与えるため,術式の違いが排便機能にどのような影響を与えるかを長期的に観察し,術式を改良していく必要がある。

【文献】

1) Onishi S, et al:J Pediatr Surg. 2016;51(12): 2010-4.

【解説】

大西 峻,家入里志 鹿児島大学小児外科 *教授

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