二分脊椎症には,脊椎とそれに伴う神経管の形成異常により髄膜や神経組織が脱出して腫瘤を形成する囊胞性脊髄髄膜瘤と,主に後方の脊椎形成異常のみで脊髄形成はほとんど問題がない潜在性二分脊椎との2種類がある。囊胞性脊髄髄膜瘤の場合は既に出生時に脊髄麻痺が完成している。潜在性二分脊椎は,成長とともに麻痺症状が出現してくることがある(脊髄係留症候群)。
囊胞性脊髄髄膜瘤は,出生時の診断と治療の既往から明らかである。潜在性二分脊椎の診断は,乳幼児期の健診で腰仙部における毛髪斑や脂肪腫,皮膚血管腫,皮膚の陥凹,皮膚洞などの存在で明らかになる場合もあるが,3~4歳頃に足部や足趾変形などの整形外科的症状と思春期に尿失禁や夜尿症が発症する泌尿器科的症状から潜在性二分脊椎による脊髄係留症候群と診断されることがある。重要なことは,脊髄麻痺高位の診断である。新生児期と乳児期には麻痺レベルが明確にならないが,幼児期に立位や歩行能力の出現の程度で麻痺レベルの診断が可能となる。
脊髄麻痺レベルによって患児の移動能力が異なる。移動能力の評価基準として歩行能力を4段階に分類するHoffa分類が簡便で二分脊椎患児の評価に使用されている1)。歩行が不能で車椅子による移動であるnon ambulator,日常生活は車椅子中心で杖歩行訓練を自宅やリハビリテーションで行っているnon functional ambulator,屋外活動では車椅子で移動し,屋内では杖や装具を使用して歩行しているhousehold ambulator,装具の有無にかかわらず屋内外を歩行できるcommunity ambulatorの4つにわかれる。治療の基本方針は患児の移動能力と生活の質を低下させないことである。
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