厚生労働省は11月13日の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」に、初診からのオンライン診療を認める対象患者の案などを示した。症状の見落としや重症化のリスクを避けるため、定期受診中の患者や、直近12カ月以内に受診した患者が新たな症状で受診する場合を基本とする考えを明示。過去に受診歴がないまったくの新規については、かかりつけ医からの紹介患者や、直近12カ月以内に予防接種や健康診断を受けた患者などを対象にすることを提案した。このうち予防接種や健診を受けた患者を対象に加えることについては、賛否が分かれた。
検討会は、現在、新型コロナウイルス感染拡大に伴う時限的措置として実施されているオンライン初診の恒久化について議論。年内に一定の方向性をまとめる予定となっている。厚労省はこの日の検討会に、オンライン初診の課題と、今後の議論の方向性を整理した資料を提出した。
恒久化にあたってオンライン初診の対象とする患者については、①慢性疾患で定期受診中の患者で新たに生じた症状の診療、②受診歴のある患者で新たに生じた症状の診療、③受診歴のない患者の診療、④かかりつけ医等からの情報提供を受けた受診歴のない患者の診療―の4つにパターン分けした上で、対応案を示した。
過去に受診歴がある①、②は基礎疾患を把握している場合があることや、過去の受診時の所見との比較で、オンライン初診における医学的リスクを一定程度軽減できると判断し、オンライン初診を容認。ただし②に該当しても、最後の受診から一定期間以上(たとえば、12カ月以上)経過している場合は、オンライン診療の前に対面診療を行うことを求める。
③、④はまったくの新規患者のケース。受診歴がある患者に比べると、オンライン初診のリスクは高いが、病院から足が遠のきがちな勤労世代にとっては、疾病の早期発見やかかりつけ医を持つきっかけになる可能性もあることから、対象に加えることにした。このうち③は、オンライン初診を行う医療機関で一定期間内(12カ月以内)に予防接種や健診を受けていて患者の状態を把握している場合に限り、オンライン初診を容認することを提案。④は、診療情報提供書があり、紹介元がオンライン診療が可能と判断した場合や、患者の側にいる看護職員がリアルタイムで診療の補助行為をするD to P with Nの環境が整ったケースを想定している。
①~④のいずれも安全性と信頼性を担保する要件を別途検討。オンライン診療に不適切な症例を事前に除外する「事前トリアージ」の仕組みの導入も提案し、その準備として各症状に関連する学会に適否の検討を依頼する考えも示した。時限的措置で認められている電話初診は、感染状況を見ながら段階的に縮小することとし、恒久化ではリアルタイムの映像があることを必須とすることも明示した。
オンライン初診の対象患者で特に議論になったのが③。予防接種や健診時に確認する患者情報の内容は、医療機関によって濃淡があることなどから一気に③まで広げず、段階的に進めるべきだとする慎重意見が多かったが、勤労世代がかかりつけ医を持つ動機づけになるのではないかと歓迎する意見もあった。