株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「非感染性・慢性疾患の疫学者が語る」鈴木貞夫

No.5052 (2021年02月20日発行) P.57

鈴木貞夫 (名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)

登録日: 2021-01-18

最終更新日: 2021-01-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「識者」などというものの中に、自分が組み入れられる日が来るとは思ってもいなかったが、研究歴だけは長くなったことの表れだろうか、年はとってみるものである。今回は自分のことについて述べる。

医学部卒業後すぐ大学院に入り、その後一貫して疫学に取り組んできた。数年の留学(疫学方法論を専攻)以外は、医学部で公衆衛生学系の教員をしており、慢性・非感染性疾患の疫学、特にがん疫学を専門としている。学生にはがん疫学と疫学理論を講義し、疫学・統計学実習も担当している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題については、初期にメディアから意見を求められたが、「感染症は専門外」と断った。疫学研究は感染するものとしないものとでは枠組みが異なり、別学問と考えている。例えば8割おじさんこと西浦博教授の論文を読んでも、根底から理解できるわけではない。

感染者の国内初確認から1年が経った今となれば、COVID-19問題は学際的なもので、感染を前提としない疫学分野の問題も多く、私たちの専門から言うべきこともあったと思えるが、当時はそういう考えはなかった。その初動の遅れの影響からか、メディアから声がかかることもほとんどなく、残念ながらこの分野からの情報発信は少ない。

本来発信したかった内容を、「非感染性・慢性疾患の疫学者が語るコロナ話」という名前で2020年2月からFacebookに書いてきた(現在245話)。これが少しずつメディアの目にとまることとなり、朝日新聞「論座」、オンラインメディア「BuzzFeed Japan」、医師サイト「m3」、NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」などで発言する機会を得た。米国国立衛生研究所の峰宗太郎先生と日経ビジネス編集部の山中浩之氏の対談をまとめた「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実(日経プレミアシリーズから出版)」でもゲストで登場させてもらった。これらすべてのなかで、「疫学的、論理的に正しいことを伝えることの大切さと難しさ」について述べている。また、コロナ騒ぎで目立った「専門外からの間違った理論」についても、できる限り例を挙げながら説明してきた。

今回、「識者の眼」から声をかけていただいたことは光栄である。COVID-19やそのほかの疫学的話題について、私がしてきたこと、考えてきたことを、できるだけわかりやすく紹介していこうと思っている。連載中に「コロナ話」が過去のこととなるよう願いつつ。

鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)[新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top