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【識者の眼】「健康省エネ住宅の重要性~その③」今村 聡

今村 聡 (医療法人社団聡伸会今村医院院長)

登録日: 2025-03-26

最終更新日: 2025-03-25

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前稿(No.5267)に引き続き、断熱性能改修の国・自治体の補助および、それを活用した医療団体と建築団体、自治体との連携の取り組みについて紹介したい。

断熱性能の改修には費用がかかる。ことに家全体となると新築と変わらぬ費用が発生することもある。改修によって得られるメリット(健康だけではなくエネルギー消費量の減少等)は大きいが、住民が現在の住まいに不都合を感じていなければ、費用をかけてまで改修しようという気持ちにならないのも事実である。特に高齢者からは、“もう長い寿命ではないからこのままでよい”という発言もよく聞く。

そこで負担を極力減らすため、改修の“第一歩”として高齢者が長時間生活する一部屋を“命を守るシェルター”として安心して生活できる空間にすること、そして、その改修に補助金を活用することを提案している。

一部屋だけの改修だとヒートショックのリスクが高まるのでは? という質問もよく受ける。一部屋の断熱性能が向上すると、周囲の環境温度も上昇するデータが得られている。また、移動の際は、上に1枚羽織る、必ず靴下をはく等の工夫や、廊下、脱着場などにパネルヒーターの設置をする対応が考えられる。長時間、良好な環境温度が維持されている一部屋で体調を十分に整えておくことこそが重要と考える。

補助金に関しては、国も断熱の重要性を十分認識し、国土交通省、環境省、経済産業省のそれぞれに、断熱に関わる補助金が用意されている。また、断熱性能改修の予算については耐震性能改修と組み合わされている補助金もあるが、これらの補助金を利用する国民には、補助金があることや仕組みについて認知されているとは言えず、有効に活用されていないのが現状である。補助金の仕組みは、自治体と国との割合や対象となる断熱の具体的手段(床、壁、窓枠等)によって複雑で、活用する際は自治体に確認することが大切である。

地域において断熱性能改修を進めていくには、建築団体や医療団体等との連携が重要となる。医療従事者は住民の健康に大きな責任をはたしており、患者等の住環境についてアドバイスができることが望ましい。そして、断熱性能改修が必要な場合、適切な事業者を紹介できると住民も安心できる。そのため地域における協議会等の設置が必要となるが「健康日本21(第三次)」において、医療と建築の連携について記載がなされた意義は大きい。自治体は各関係団体への声掛け、住民への啓発、補助金等大きな役割を担っている。

2024年度は、医療・建築・自治体参加のシンポジウムが、北九州市、神戸市、大阪市、宇都宮市、板橋区など都市部のほか、全国10数箇所で開催された。シンポジウムでは、住民、医療団体、建築団体、自治体の参加者に、改めて住宅の断熱性能改修が健康や省エネにとって重要であることのエビデンス、希望する住民に補助金を活用した住宅改修の実例を紹介した。

2025年度は実際の改修、および全国へ事業のさらなる展開を図る予定である。そして、断熱性能改修後の新たなデータおよびエビデンスの収集を行う予定である。読者の地元でこのような活動が行われることがあれば、ぜひご参加頂ければと思う。

今村 聡(医療法人社団聡伸会今村医院院長)[生活環境][断熱補助金

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