No.5052 (2021年02月20日発行) P.58
藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)
登録日: 2021-01-20
最終更新日: 2021-01-20
世界保健機関(WHO)テドロス事務局長が国際的な緊急事態宣言(public health emergency of international concern:PHEIC)を出したのは、ちょうど一年前の2020年1月30日。今、まさに“第3波”の真っ直中、我が国において医薬品、医療機器、再生医療等製品等の薬事承認の実務を担っている独立行政法人、医薬品医療機器総合機構(略称:PMDA“ピーエムディエー”)の仕事や日本の臨床研究を巡る話題を医師各位に広く知って頂くべく、今回一年、本コーナーに寄稿する。
PMDAは2004年4月に設立された若い組織である。1997年7月、ソリブジン事件や非加熱血液製剤によるHIV感染問題を契機に、厚生省(当時)の薬事関連組織が外出しされ、国立医薬品食品衛生研究所傘下に医薬品医療機器審査センター(職員数70名)が設立された。そのセンターと副作用被害救済を担当する組織などが合流する形で独立行政法人化され、現在は1300名ほどの職員を擁する。医師は60名前後が在籍し、その多くが大学病院やナショナルセンター病院からの出向者である。一方、執行役員以上は厚生労働省からの出向者で大半が占められている。予算規模は290億円弱、うち13%弱が国からの運営費交付金・補助金で、残りは審査・相談業務で得られる各種手数料と安全対策や健康被害救済業務を運営するための医薬品・医療機器メーカーからの拠出金である。
米国薬事規制当局のFDAが職員数1.7万人超、予算規模59億ドル(国費割合55%、医薬品審査部門は35%)、EUでは加盟各国の薬事規制当局を統括するEMA(職員数800名超、予算規模3.48億ユーロ)の下、フランス(ANSM)、ドイツ(BfArM)といった各国当局が各々職員1000名前後、予算規模1.2億ユーロ前後で業務にあたっているのと比べて、PMDAは一桁少ない職員数と予算規模で、承認審査のスピードはFDAと並び、EUを凌駕し、世界3大規制当局の一角を占めるまでになっていることは誇りたい。が一方で、世界で初めて承認する品目の割合は5%程度だと欧米からは揶揄されている。
昨年来、新型コロナウイルス感染症対応の医療機器、体外診断薬、医薬品、さらにはワクチンの承認審査や関連する各種調査(QMS、GMP、GLPなど)に我々は忙殺されているが、国の安全保障の一環と見直されてきた医薬品等の有効性、安全性、品質を担保する組織へのさらなる発展を目指したい。
藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]