No.5056 (2021年03月20日発行) P.55
山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
登録日: 2021-02-18
最終更新日: 2021-02-18
人には生命活動に危険が及んだ時、それを察知して知らせるシステムがある。それは「疲れ」「痛み」「発熱」の3つで、“三大生体アラーム”として認識されているであろう。
このうち、「痛み」や「発熱」に対しては、私たちは比較的気がつきやすく、また、気がついた時には何かと対処を試みる。
しかし、「疲れ」についてはすぐに対処しないという人が多いのではないだろうか。それほど疲れは、自分にも周囲にとっても理解しがたい症状で、感覚的なものだからである。明確に数値としても表せず、最初のうちは痛みや発熱ほどのつらさがないので無理に頑張ってしまうことも多い。それは、医療従事者であっても同じである。
さて、最近のコロナ禍の生活で、一般的には積極的に体を動かすことが減りがちである。心療内科の患者さんには、リモートワークが推奨され、通勤時間もなくなり、疲れていないはずなのになんだかだるいと訴える人も多くみられる。
今、私たちは、職場ではもとより、家庭でも至るところで新型コロナウイルスの感染症対策として「人混みは避けよう」「消毒は必須」と、常に頭の中ですべきことを考えながら生活をしている。
だからこそ、意識して体や頭、そして心を休める必要性がある。私たちは本当に新型コロナウイルスという予期せぬ存在に突然、脅かされ、それから約一年ずっと闘い続けている。メンタルの患者さんには、この“突然”とか“予期せぬ”ことが、これまた他の人以上に苦手な方が多い。したがって、患者さんにはこの一年、どんなに大変だったのか、ストレスを抱えていたのか、一生懸命頑張ってきた自分をほめて、励まし、休ませてあげましょうとお話ししている。皆さんにも同じことをお伝えしたい。医療従事者として誰よりも頑張ってこられた皆さんは、自分が自分に送っている「疲れ」のシグナルを見過ごしてはいけない。それが、今、すべきことである。
山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[生体アラーム]