家族にとっては大事な身内が人生の最終段階を迎えていることは,たとえ何となく薄々感じていたとしても,あるいは医師からはっきりと現実を伝えられていても,そのことを認めるのはとても辛いことである。できれば認めたくないというのが本音である場合のほうが多いのではないだろうか。
我々,医療従事者はそのことを十分に理解した上で家族に寄り添い,関わる必要がある。
その上で可能な限り家族がこの最終段階を受け入れ,患者との貴重な時間を大事に有意義に過ごせるような説明・支援を行うことを求められている。
おそらくこの最終段階になる前に患者のみならず家族とも信頼構築はある程度できているとは思うが,まだ実感できていない場合や時として在宅医に紹介になったのがあまりにも状態が悪く予後が本当にわずかしか残されていない場合には,とにかくコミュニケーションを密に取り,信頼構築まで行かなくても何かあれば話せる間柄になるか,それも難しければ誰か信頼を得ているスタッフを見つけて間に入ってもらう必要がある。
正確な予後予測が難しいのは皆さん承知されていると思うが,予後の段階に応じて患者の日常生活活動(ADL)が変化し自分自身でできることがどんどん少なくなっていくので,少なくともせめて月単位・週単位・日単位の予後を予測し,家人に今の状況でできることを伝えていく必要がある。
患者にしてあげたいことや患者にどうしても伝えておきたいことなどがないかを確認する。その内容を確認した上で上述の生命予後との関係で実現可能なことを実現可能なタイミングで行えるよう働きかける。また,伝えておきたいことに関しても家族・患者双方の状況を冷静に判断する中で伝えるべきタイミングのアドバイスを行う。
人は旅立ちに向けて当然身体に変化が生じてくるのでパンフレットなどを利用して説明を行う(図)。
・徐々に食事や水分を摂る量が少なくなってきます。
・おしっこの量が少なくなってきます。
・痰がゴロゴロすることがあります。
・眠ることが多くなります。
など
上記のような身体の変化の後のいよいよ最期,旅立ちのときの様子を伝える。
呼吸の間隔が長くなり呼吸をしない(無呼吸)時間ができ,そしていよいよ呼吸をしなくなる。
その後,心臓の動きが止まり,脈拍を感じられなくなる。
その過程で心配であればいつでも訪問看護師や医師を呼んでも良い。家族だけで最期まで見届けてから連絡でも良い。
可能であれば亡くなった直後のエンゼルケアの際から意識する。その後,可能であれば外来等でも話をする。
佐久総合病院では,死亡後49日を目安に遺族訪問を行っている。遺族訪問ではグリーフケアのみならず自分たちの訪問診療・看護に対しての思いを確認することができる。それ以外には年に1度「故人を偲ぶ会」を開催し,同じように大事な人を失くした人達で思いを共有する場を設けている。
このような取り組みを通して,家族・遺族に,亡くなった家族の生命体としての命は終わりかもしれないが家族が生きている限り物語られる「ひと」としてのいのちはまだまだ終わらないことを告げる1)。
残り535文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する