近年の自殺対策のトピックとして,地域介入比較対照研究である厚生労働科学研究費補助金(自殺対策のための戦略研究)「複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究(NOCOMIT-J)」(研究班リーダー:大野 裕)の学術誌PLoS One1)に報告された研究成果を紹介する。
NOCOMIT-Jでは,自殺による死亡率が長年にわたって高率な地方郡部地域と近年自殺が増加している都市部地域において,地域の自殺対策事業として一次から三次までの様々な自殺予防対策を組み合わせた複合的自殺予防対策プログラムを介入地区で3.5年間実施し,対照地区と比較して自殺企図(自殺死亡および自殺未遂)の発生への予防効果を検証した。
主たる結果を要約すると,地方郡部地域では,介入地区でプログラム実施率は対照地区よりも明らかに高く,当初期待されていた自殺企図の減少効果が男性および65歳以上の高齢者で確認され,強い予防効果が得られた。主要評価項目である全体の自殺企図の発生率に関しては明確な効果を示さなかったが,これは介入が性別や世代など異なるサブグループに対して異なる効果を持つためであると考察された。一方,都市部地域では明確な効果を示さず,プログラム実施率が影響している可能性が示唆された。
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