エーザイは6月8日、米製薬大手バイオジェンと共同開発・製品化を進めてきたアルツハイマー病(AD)治療薬アデュカヌマブについて同日付で米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したと発表した。エーザイの内藤晴夫CEOは翌9日、オンラインで記者会見し、「ようやくADの病理に作用する最初の治療薬に至ることができた。感無量の思い」とコメントした。
アデュカヌマブはヒトモノクローナル抗体で、脳内のアミロイドβプラークを減少させることによりADの病理に作用する全く新しい認知症治療薬。エーザイが開発したアリセプト(一般名:ドネペジル)をはじめとする従来の認知症治療薬は、いずれも症状の進行抑制を効能・効果としているのに対し、アデュカヌマブはADの疾患修飾薬(disease-modifying drug)であり、疾患そのものの進行を抑制することが期待されている。
FDAは、初期段階(軽度認知障害や軽度認知症)のAD患者のアミロイドβプラークを59~71%減少させる効果を示した臨床試験(ENGAGE試験、EMERGE試験)などのデータに基づき、「今後検証試験で臨床的有用性を確認すること」を要件としてアデュカヌマブを迅速承認した。米国での販売名は「アデュヘルム(ADUHELM)」。
9日の会見で内藤CEOは「FDAの承認を得て最初に心に浮かんだのは、1996年11月25日のアリセプトの米国承認だった。その時からおよそ25年、四半世紀が経ち、ようやくADの病理に作用する最初の治療薬に至ることができた。感無量の思いだ」と述べるとともに、AD疾患修飾薬の「価値」に触れ、「価値の表現型である価格は、当事者や家族のベネフィットなど当該薬剤がもたらす多面的な価値によって評価されるべき」と、家族の介護負担軽減・就労機会増大なども含めた評価を求めた。
アデュカヌマブは、日本でもバイオジェンにより昨年12月に承認申請が行われており、現在審査が進められている。
田村憲久厚労相は8日の記者会見で、米国での承認について「一つの大きな一歩」としながら、「(日本では)安全性・有効性を確認している最中。しっかりと審査をしていかなければならない」と慎重に審査を進める考えを示した。
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