災害時に最も大事なことは「生き延びる」ことである。そのためには,平常時の防災意識とともに事前の備えが重要となる。しかしながら,災害発生時に自分自身を危険から守ることができる者とそうではない者がいる。
一般に障害者・高齢者・乳幼児などが危険を回避できない対象に挙げられるが,郡山1)は災害要援護者になりうる者として,認知症者や精神疾患患者などの他者との意思疎通が困難な者や,認知機能・身体機能の障害や低下などにより,自力での移動が困難な者,在宅酸素療法や透析などの特別な医療対応が必要な者を挙げている。施設入居高齢者の場合には,避難誘導者と避難ルートの確保が重要であり,夜間の災害には,この2点が特に重要なポイントとなる。
また,集団避難生活が始まった状況下では感染予防対策が健康維持の上で重要となる。災害時の感染予防対策としては,早い時期からのマスク配布や簡易式アルコール剤の準備と手洗い励行,さらには調理時の手袋装着などが事前の備えとして周知され,感染予防対策意識も高まってきている。しかし,環境調整という視点からの感染予防対策に課題が残されているのが現状である。
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