【質問者】
吉住朋晴 九州大学大学院消化器・総合外科准教授
【MRIによる形態やCTAPでの造影所見やFDG-PET検査のSUVmaxなどが用いられる】
画像による肝癌の悪性度診断に関して,多くの研究が行われてきました。治療前に悪性度が評価できれば,肝切除とラジオ波腫瘍焼灼療法のどちらを選択するか,あるいは肝切除の中でも部分切除と系統的切除のどちらを選択するかの重要な判断材料となりうるからです。肝臓外科医は,悪性度の高い症例で系統的切除を選択したいと考えます。一方で,肝癌は慢性肝疾患を伴うことが多いため,肝機能の温存という点では部分切除のほうが安全性は高いと考えられます。しかし,部分切除が腫瘍のみを摘出するのに対し,門脈支配にしたがって肝臓を切除する系統的切除は顕微鏡的門脈浸潤も含めて切除可能で,腫瘍の根治性から言えばより優れた術式です。
悪性度の評価には,大きくわけて3つあると考えています。①腫瘍の形態,②血流の変化,③腫瘍の生物学的な動態です。また,悪性度の判定には,画像ではとらえられない顕微鏡的な脈管浸潤の存在や切除後の再発・生存率が用いられます。
腫瘍の形態に関しては,腫瘍周囲への浸潤である被膜外浸潤を画像的に診断しようとする研究がみられます1)。「原発性肝癌取扱い規約」の肉眼分類に単結節型,単結節周囲増殖型があり,単結節周囲増殖型は単結節型より進行した病態を反映していると考えられています。そこで腫瘍辺縁をsmooth typeとnon-smooth typeにわけ,単結節型と単結節周囲増殖型を鑑別することで悪性度を評価する論文がみられます。この鑑別には,ガドリニウム造影剤を用いたMRIが用いられます2)。
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