著: | 佐藤 功(清仁会宇多津病院放射線科画像診断センター長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 266頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2022年01月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-6330-0 |
版数: | 第1 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
はじめに
本書の読み方
第Ⅰ章 解剖
1 X線単純写真
1. 肺野の辺縁
2. 気管支樹
3. 中枢気道
4. 傍気管線
5. 中枢肺動脈
6. 肺野末梢の血管分布の概念
7. 肺の範囲・肺の辺縁
8. 奇静脈食道陥凹
2 CT
1. 正常解剖
2. 気管支分岐異常
3. 縦隔内血管の分岐異常・正常変異
第Ⅱ章 症 例
1 軟部陰影
Case1 Recklinghausen 病
Case2 疣贅(イボ)
Case3 豊胸術後
Case4 漏斗胸
Case5 Poland症候群
2 骨陰影
1. 肋骨
2. 椎体
Case1 頸椎肋骨(頸肋,腰肋)
Case2 骨島
Case3 腺癌の右第2 肋骨浸潤
Case4 腺癌とその椎体転移
3 肺門陰影
Case1 腺癌
Case2 扁平上皮癌
Case3 腺癌
Case4 胸腺腫
4 シルエットサイン
Case1 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
Case2 左下葉無気肺(左下葉気管支の炎症性変化による)
Case3 左下葉無気肺(左下葉末梢の慢性炎症による)
Case4 左上葉無気肺(扁平上皮癌)
Case5 左上葉無気肺(扁平上皮癌)
Case6 腺癌
Case7 腺癌
Case8 大動脈瘤
Case9 左腕頭静脈走行異常(左上大静脈遺残)
5 気管支・血管分岐
Case1 小細胞癌,縦隔リンパ節転移
Case2 右上葉無気肺(扁平上皮癌)
Case3 扁平上皮癌
Case4 気管支結核,肺結核
Case5 気管支閉鎖症
Case6 腺癌
Case7 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
Case8 肺分画症(肺底動脈大動脈起始症)
Case9 肺分画症
Case10 シミター症候群(部分肺静脈還流異常症)
6 空洞・囊胞
Case1 腺癌
Case2 腺癌
Case3 ニューモシスチス肺炎,扁平上皮癌
Case4 サルコイドーシス
7 葉間線
Case1 扁平上皮癌
Case2 葉間胸水,胸水
Case3 奇静脈葉
終 章
画像は隅から隅まで
Case 右肺が左肺型の2 葉(左右のミラーイメージ),奇静脈連結,腹部臓器逆位
おわりに
Lesson 1 傍心膜脂肪組織
Lesson 2 大動脈弓不鮮明(脂肪沈着,生理的現象)
Lesson 3 左肺動脈明示化(縦隔気腫例)
Lesson 4 右葉間が明瞭な例
Lesson 5 肺の範囲(前接合線の偏位)
Lesson 6 両側のB7の正常変異
Lesson 7 左上葉気管支から舌区気管支が水平方向に分岐
Lesson 8 下葉気管支と肺動脈の関係
Lesson 9 気管支の娘枝
Lesson 10 左上葉無気肺による容積減少の見え方と葉間の位置
Lesson 11 胸部X線写真側面像の解析
Lesson 12 気管支閉鎖症
Lesson 13 区域をまたぐ存在
Lesson 14 びまん性粒状影の鑑別パターン
Lesson 15 胸部X線写真における葉間線の描出
Lesson 16 incomplete border sign(不完全辺縁サイン)
現在の診療の現場では,胸部画像診断は胸部X線写真とそれに続くCTが主であろう。なかでも胸部X線写真はその歴史も長く,現在の臨床の場でも最も使用されるもののひとつである。その画像解析や読影方法は長年にわたる先人の知識や経験の膨大な蓄積に基づいている。さらに,CTなど新たな診断機器の出現とその解像度の向上も,診断の領域に大きな力を注入できる地平が開発されてきている。
1976(昭和51)年に大学卒業の筆者は,1980(昭和55)年頃,胸部画像の診断で,いわゆる「目からウロコ」状態の,驚きの,いわばカルチャーショックとも言える衝撃を経験した。それは,札幌医科大学内科学第三講座教授,鈴木 明先生の講演で,当時の主であったモダリティーとしての断層写真,さらに日常臨床に広く利用されつつあったCTを含めての区域解剖に基づく画像解析,画像診断である。すなわち,気管支や血管などを同定・解析することにより,肺の詳細な部位の同定が可能となり,それを疾患に特有な進展様式と関連づけて解析することであった。今や通常の読影手段であるが,初めて聞いたときの衝撃は今でも忘れられない。
ところが近年,すべての初学者が肺既存構造を念頭に置き,区域解剖を含めての読影手法を実施するには少しのハードルがあるように思われた。この思いを強くするようになったのは,「香川胸部CT症例検討会」がきっかけである。香川県内の研修医の先生方への基本的な読影勉強会で,月に1回行われている。この原稿を執筆する時点では170回を超え,開始以来14年以上を数える会での経験である。この会では,1症例に1時間をかけて胸部X線写真からそれに続いてCTを読影し,診断を考えることを主眼としている。初学者が最初に画像に対面する時に多少の戸惑いを感ずる様子は少なくないが,回を重ねると,次第に容易に解析できるようになるのが感じられる。
知識として理解する区域解剖を,実際の臨床画像の読影時に応用すべく,実践を通しての読影,および確診へのツールとなることを願い,本書にまとめ上梓した次第である。