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漫画が描ける喜び[プラタナス]

No.5082 (2021年09月18日発行) P.3

白﨑加純 (聖路加国際病院救急部・救命救急センター専攻医)

登録日: 2021-09-18

最終更新日: 2021-09-15

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  • Mさんは生来健康な30歳代の女性。地元の大学を卒業し公務員として働いていたが、漫画家の夢が捨てきれず上京し、充実した日々を送っていた。しかし、ある日突然呼吸がしづらくなり、当院の救急外来へ搬送となった。CO2ナルコーシスの状態であり、すぐさま気管挿管を行い、集中治療室に入院となった。

    各種検査をしたが原因はわからず、ただ、呼吸をするのに最も大事な横隔膜が麻痺している状態であった。コロナの流行で実家からは母親しか来られず、東京で仲良くしていた友達も面会制限で会えず、孤独な日々を過ごしていたであろう彼女に「人工呼吸器が外せない状態です。首にメスで切開して穴を開ける手術が必要です」と話さなければならなかった。目に涙を浮かべながらも真剣に話を聞いていた彼女を見て、もし自分が彼女のように、突然原因不明の病で入院し家族や友達に会えない、先も見えないと宣告されたら、その後何を糧に過ごしたらいいのだろうかと思った。無事に気管切開術を終えて、考えられうるすべての検査を施行したところで上級医にこう提案した。「Mさんですが、地元に転院させてあげられないでしょうか。これから長く人工呼吸管理が必要になり、原因検査も長期にわたると思います。知らない土地で先の見えないまま漠然と過ごすより、家族や友人とすぐに会えるような環境のほうが彼女にとっても良いと思うのです」。

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