4月14日の夜の前震、さらに16日夜半、午前1時の本震で熊本は痛めつけられました。この原稿を書いている7月になっても、市中心部にある2つの主要ホテルの客室は、いずれもまだ稼働しておらず、大手スーパーや映画館も休業中。観光の目玉である熊本城が被災したことで、観光客もめっきり減りました。立ち入り禁止になっているのですから当然です。「熊本は加藤清正の城でもつ」、改めて先人の偉大さを思い知らされました。
混乱のさなかに駆けつけてくださったJMAT(日本医師会災害医療チーム)をはじめ、各医療チームや自衛隊、ボランティアの皆様方のご支援には感謝しています。そのことは様々なメディアで取り上げられているので、ここでは遠慮いたしましょう。気になっているのは、別のことです。
地震の後、街には「頑張れ、熊本」の横断幕が掲げられていました。しかし、この言葉にはどうも違和感があります。頑張れとの言葉には、励ましよりも押し付けがましさを感じてしまうのです。新聞にも、孫から「何を頑張ればいいの?どうしろと言っているの?」と聞かれて困っているという投書が載っていました。車中泊で疲れているのに、家や店が崩壊して途方に暮れているのに、さらに頑張れと尻を叩かれるのは辛い、というコメントも寄せられました。
そのせいかどうか、横断幕は、「がまだせ」に変更され、最近では「負けんばい・熊本」のほうが多くなっているようです。
「頑張れ」は他人に掛ける言葉。「がまだせ」はその方言バージョンで、もっと働けという意味。自ら発する「がまだす」ならば気張るに近いでしょうか。一緒に汗を流してくれる人から「頑張って」と声をかけられるのはよいとしても、関係ない人からの声には「言葉だけでなく、実際に手伝ってよ」と言いたくなる人もいるかもしれません。
その点、自ら発する言葉「負けんばい」は、負けるもんか、と自分を鼓舞するイメージがあって、これならすんなり受け入れられます。
「頑張る」を辞書で引くと、『頑張るは当て字。我を張る、眼張るの転。①我意を張り通す ②忍耐して努力する ③ある場所を占めて動かない』とあり、あまり良いイメージではありません。「頑張れ」と気楽に声をかけるのは憚られるようです。では、どのような言葉をかければよいのか、改めて考えると、これがまた難しい。頑張るにも地域差があり、住んでいる人の心に響く言葉も違うからです。
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