厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」は11月29日、初診からのオンライン診療の実施についての規定を盛り込んだ指針の改訂案を概ね了承した。今後、文言修正やパブリックコメントを経て内容を確定させた後、医政局長通知として関係者に周知する。初診からのオンライン診療の具体的内容が固まったことを受け、今後は中央社会保険医療協議会総会で、診療報酬上の評価についての議論が行われる。
初診からのオンライン診療の枠組みは、前回の検討会で了承された内容から大きな変更はない。初診からのオンライン診療を行うのは「かかりつけの医師」を原則とするが、「かかりつけの医師」でなくとも、患者が提供した既往歴や過去の診療録、健康診断の結果といった医学的情報と症状から医師が可能と判断した場合は、初診からのオンライン診療を認める。その際には、患者から提供された情報の診療録への記載を求める。
なお、この場合の「かかりつけの医師」は、オンライン診療を実施する場合にのみ適用される概念で、いわゆる「かかりつけ医」や「かかりつけ医機能」とは別のもの。指針改訂案では、「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」と定義づけしている。
一方、「かかりつけの医師」以外による初診で、患者の医学的情報も十分把握できていない場合は、「診療前相談」の実施を義務化。医師・患者間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、症状、医学的情報が確認でき、双方が合意した場合に限り、オンライン診療の実施が可能になる。診療前相談を経てオンライン診療に至った場合は、診療前相談で得た情報を診療録に記載しなければならない。
初診からのオンライン診療が可能になった後も、オンライン診療と直接の対面診療の適切な組み合わせを求める原則は維持する。ただ、検討会では、上気道炎のような軽微な症状ではオンラインによる一度の診療で完結する場合もあり、長期的な指導・管理を必要とする疾患とは区別するべきではないかとの指摘があった。このため、日本医学会連合が考え方を整理し、指針本体や策定予定のQ&Aに反映させる方針が確認された。
厚生労働省は今後、局長通知発出に向けた準備に入るが、通知の発出時期や、新指針の施行日は未定。新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間は、コロナ対応の特例措置が指針の規定よりも優先されるためで、同省はコロナの感染状況も勘案しながら、適切な時期を見きわめたいとしている。