No.4798 (2016年04月09日発行) P.18
二木 立 (日本福祉大学学長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-01-26
今回は、2025年に「必要病床数」が大幅に減少するとの2つの将来予測の妥当性を検討します。1つは、本連載㊹(2015年6月27日号)で検討した政府の社会保障制度改革推進本部「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」第1次報告(以下、「専門調査会第1次報告」)の再検討です。もう1つは、千葉大学医学部附属病院グループの「入院受療率のトレンドとアクセス性を考慮した必要病床数の推計」です(井出博生ほか:『社会保険旬報』2015年8月21日号。以下、「千葉大報告」)。
前者を再検討するのは、連載㊹の分析に重大な見落としがあることが分かったからです。後者を検討するのは、専門調査会とは全く別の方法・仮定で今後の入院患者数・必要病床数を推計したにもかかわらず、2025年の精神を除いた必要病床数は107万床と、「専門調査会第1次報告」の推計(115~119万床)とほぼ同じ結果を出しているからです。
「専門調査会第1次報告」は、今後病院の「機能分化・連携」を促進することにより、病床当たりの医療資源総量の増加と平均在院日数の短縮を見込まなくても、「2025年の医療機能別必要病床数」は115~119万床程度(高度急性期13.0万床程度+急性期40.1万床程度+回復期37.5万床程度=小計90.6万床程度、慢性期24.2~28.5万床程度)になると推計しました。これは現状(2013年)の病床総数134.7万床(一般病床100.6万床、療養病床34.1万床)よりも15.7~19.7万床少ない数字です。「機能分化等をしないまま高齢化等を織り込んだ場合」に必要となる152万床程度と比べると、33~37万床もの削減になります。
以上の「必要病床数」の推計は、2015年3月に発表された厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)に含まれた「2025年の医療需要の推計方法」に基づくものとされていました。私も、それに基づけば、現在の療養病床(2025年は慢性期病床)が34.1万床から24.2~28.5万床程度へと5.6~9.9万床減るのは理解できました。しかし、現在の一般病床(2025年の高度急性期・急性期・回復期病床)が100.6万床から90.6万床へと10万床もなぜ減るのかは分かりませんでした。
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