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「地域包括ケア研究会2015年度報告書」をどう読むか? [深層を読む・真相を解く(54)]

No.4806 (2016年06月04日発行) P.20

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • 地域包括ケア研究会(座長:田中滋慶應義塾大学大学院名誉教授)は、本年5月、報告書「地域包括ケアシステムと地域マネジメント」を公表しました(以下、「本報告書」)。これは、厚生労働省老人保健健康増進等事業の一環として2008年に設立された地域包括ケア研究会の5回目の報告書です。地域包括ケア研究会の一連の報告書は地域包括ケアシステムの理念・概念整理と政策形成の「進化」を主導してきました。本稿では、本報告書のポイント・新しさを今までの報告書と比べながら検討します。

    「地域マネジメント」が中心テーマ

    本報告書の中心テーマは、自治体(主として市町村)による「地域マネジメント」です。「地域マネジメント」は、「地域の実態把握・課題分析を通じて、地域における共通の目標を設定し、関係者間で共有するとともに、その達成に向けた具体的な計画を作成・実行し、評価と計画の見直しを繰り返し行うことで、目標達成に向けた活動を継続的に改善する取組」と定義されています(4頁)。これは「地域包括ケアシステムの構築における工程管理」であり、その「単位としては、自治体が適当」とされています。「地域マネジメント」は医療関係者にはなじみのない概念ですが、個人を対象とした「ケアマネジメント」の地域への拡張版と言えます。
    前回の2013年度報告書でも「自治体に求められる機能」は示されていましたが、記述は平板で、課題の列挙にとどまっていました。それに対して、本報告書の「3.自治体による地域マネジメント」には、試行錯誤を続けている「普通の自治体が地域包括ケアシステムを構築するための必要な方策」がきめ細かく書かれており、自治体関係者必読と言えます。
    本報告書は、「地域マネジメント」に対応して、「専門職が個々の『利用者』に対してサービス提供を行う日常業務は当然として、さらに『地域』に対する貢献が今後の役割として期待されている」としています(16頁)。これは、保健医療福祉職に求められる新しい課題と言えます。福祉系大学の学長としては、この文脈で、「社会福祉の専門性を活かしたソーシャルワークの重要性は、これまで以上に大きくなる」と書かれたことをうれしく思いました。
    他面、本報告書は「地域マネジメント」を強調しているにもかかわらず、地域包括ケアシステムの構築と密接に関係する「地域福祉計画」と「地域医療構想」、および地域包括ケアシステムの福祉的側面を強化する上で重要な役割を果たす社会福祉協議会については触れていません。これは本報告書が厚生労働省老健局主導でまとめられ、他局との調整が十分に行われなかったためと思われ、残念です。

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