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【識者の眼】「漢方薬は果たして安全か?」宮坂信之

No.5113 (2022年04月23日発行) P.60

宮坂信之 (東京医科歯科大学名誉教授)

登録日: 2022-02-03

最終更新日: 2022-02-03

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「漢方薬は副作用が少ない」というのが通説であり、日本では開業医もよく処方する。中国人が日本のドラッグストアに漢方薬を買い求めにくるというのは笑い話のような本当の話である。しかし、そこまで安全性が高い薬剤であろうか?

近年、漢方薬による間質性肺炎の症例が見られる。小柴胡湯、柴苓湯、柴朴湯、防風通聖散などがある。共通するのは「オウゴン」であることが多い。既存の肺障害、高齢者がリスク因子とされる。

初発症状は、徐々に始まる空咳(乾性咳嗽)と息切れ(呼吸困難)が多い。この時点で気が付かないと、症状がひどくなってから初めて疑われる。肥満解消を目的として漢方薬を使い、ひどい間質性肺炎になってしまっては患者さんも泣くに泣けない。

漢方薬による間質性肺炎は、画像上、すりガラス影が急速かつ広範に、かつ両側性に出現するのが特徴である。指定難病でもある特発性肺線維症(IPF)では新旧の病変が入り混じり、線維化の所見がみられるのとは対照的である。臨床経過も画像所見も異なり、両者の鑑別は容易である。

漢方薬の場合はⅣ型アレルギー性の機序が多く、肺病変が出現するのは薬剤開始2週間以降である。しかし、漢方薬は合剤であり、どの成分が有効性と安全性を担っているのかはわからないことが多い。通常は、Ⅳ型アレルギー性を疑う場合には薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が行われるが、漢方薬の場合は、薬剤自体にマイトゲン(リンパ球分裂物質)活性があるものもあり、しかも約半数程度しかDLSTは陽性に出ない。間質性肺炎のマーカーとされるKL-6も必ずしも高くはない。それよりは、漢方薬の使用下に急激に呼吸障害が出てきた場合に、画像所見が臨床的な鑑別には重要である。

予後は、間質性肺炎の可能性を疑っていかに早く薬を中止するかにかかっている。既存の肺障害があり、ステロイドのお世話になると大変である。

漢方薬はいろいろな症状を和らげるために頻用されるが、安易な投薬は危険である。

宮坂信之(東京医科歯科大学名誉教授)[間質性肺炎]

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