近年,小児肝がんに対する肝移植療法の有用性が注目を集めている。成人の肝細胞癌に対しては肝移植の適応がミラノ基準としてほぼ確立され,肝外病変があるものは言うまでもなく,肝内に径3cmを超える病変があるものや,病変の数が3個を超えるものは肝移植の適応とはされない。これに対して,肝芽腫を中心とする小児肝がんに対する肝移植の適応は,これまでのところ「通常手術で完全切除が不可能で,肝外に制御不能の病変がない症例」とされている。
2004年にOtteらは,欧州の小児がん共同臨床試験グループSIOPELのデータをまとめて,肝芽腫に対して肝移植がprimaryに行われた場合の生存率が80%を超える一方で,通常手術で手術の遺残があったり,再発があった場合に肝移植が行われた場合の生存率は30%台と,有意に下がることを報告した。ところがその後,わが国の生体肝移植のデータを含めて,多くの施設から再手術例,再発例に対する肝移植の成績が必ずしも悪くないことが報告された1)。
肝移植後の免疫抑制療法下での化学療法は未解決の問題である。一方で,年長児や思春期以降では,低年齢児の肝がんとは病理学的特性が異なり,肝芽腫と肝細胞癌の中間的な特性を持ったものも現れる。こうした症例は世界的にも数が少なく,肝移植の有効性は未知数である。小児肝がんに対する肝移植の有用性はいまだに確立されてはいないが,大きな期待がかけられている。
【文献】
1) Sakamoto S, et al:Liver Transpl. 2014;20(3): 333-46.
【解説】
黒田達夫 慶應義塾大学小児外科教授