強迫症(obsessive-compulsive disorder:OCD)は,繰り返し生じる思考(強迫観念)とそれを打ち消すための繰り返しの行動(強迫行為)を主たる症状とする疾患である。強迫観念や強迫行為はしばしば長時間に及び,慢性的に持続し,日常生活に大きな支障を生じる。OCDの生涯有病率は2%前後で,好発年齢は,男性は10歳代,女性は20~30歳代で,患者の半数近くは経過中にうつ病を合併する。10歳代発症の男児では,チックや自閉スペクトラム症といった神経発達症の併存例が多い。
OCDの症状は,「汚染恐怖と洗浄」「加害不安と確認」「対称性や正確性へのこだわり」「性的・宗教的な思考へのとらわれ」など多様な亜型がある。強迫観念か強迫行為,またはその両者が存在し,1日に1時間以上を症状に費やし,生活機能障害を生じている場合にOCDと診断する。身体疾患や器質疾患,他の精神疾患による二次的なものは除外する。
まず,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRI)を主体とした薬物療法,または認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)を導入する1)。未成年ではSSRIによる衝動性亢進が問題となるため,薬物療法よりCBTによる介入を優先する。薬物療法は導入が容易でありプライマリケアでも用いやすいが,有効性や長期的効果はCBTが優れており,薬物療法への反応が不十分な場合はCBTの導入が望ましい。難治例や重症例に対してはCBTとSSRIの併用療法や,抗精神病薬をSSRIに付加する強化療法の実施を考慮する。
なお,ベンゾジアゼピン系抗不安薬(エチゾラムなど)単独による薬物療法は有効性が示されておらず,長期漫然投与による依存形成などの問題もあり,推奨されない。SSRIに併用する場合も最小限の使用にとどめる。
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