社会保障審議会医療部会は8月17日、オンライン診療を通所介護事業所や公民館などでも受けられるようにする規制緩和について議論した。政府の規制改革実施計画などを踏まえたものだが、委員からは賛否両論が示された。
オンライン診療の指針では受診場所について、医療法で医療提供の場とされている病院や診療所、介護老人保健施設、患者の居宅等(特別養護老人ホームなどを含む)のほか、患者の職場などでの受診も認めている。
これに対して政府は、デジタルデバイスに明るくない高齢者等にもオンライン診療の受診機会を広げる必要があるとの考えから、今年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」で、通所介護事業所や公民館といった身近な場所での受診を可能とするための規制緩和を検討し、2022年度中に結論を出すよう厚生労働省に要請。また「成長戦略フォローアップ」(21年6月閣議決定)では、MaaS(マース:Mobility as a Service)を普及するための取り組みとして、自動車を活用してオンライン診療を行う場合の課題整理などを求めている。
MaaSは、公共交通を含むすべての移動手段を1つのサービスと捉え、スマートフォンアプリで一括して検索・予約・決済などができるようにするサービス。高齢者の外出機会確保などへの貢献も期待され、医療分野では中山間地域において看護師や保健師が保健室機能を備えたマルチタスク車両で居宅を訪問し、その立ち合いのもと、患者が車内でオンライン診療を受ける実証実験が行われている。
部会で、角田徹委員(日本医師会副会長)は、通所介護事業所や公民館などでは診療に必要な日常生活の情報を得ることが困難だなどとして、オンライン診療の受診場所拡大に反対姿勢を表明。MaaSの活用についても、▶患者宅にICTの利用をサポートする人材を派遣する、▶巡回診療を活用する―といった既存の枠組みの柔軟な運用や工夫で対応できるのではないかと否定的な見解を示した。これに対して、「高齢者の増加で医療機関に通えない患者がこれから増えることを背景とすると、いろいろな所でオンライン診療が受けられるようにすることには賛成」(神野正博委員・全日本病院協会副会長)との声もあり、委員の間で賛否が分かれた。