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先天性囊胞性肺疾患 【近年では出生前に発見,治療が行われるなど,周産期の疾患に移行しつつある】

No.4824 (2016年10月08日発行) P.46

黒田達夫 (慶應義塾大学小児外科教授)

登録日: 2016-10-07

最終更新日: 2016-10-11

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先天性囊胞性肺疾患とは,肺実質内に正常の気管支・肺胞以外の肉眼的・顕微鏡的囊胞性病変が先天的に不可逆性に存在するものをいう。最も頻度が高いのは,以前は先天性囊胞状腺腫様肺形成異常(CCAM)と呼ばれていた疾患で,近年は先天性肺気道形成異常(CPAM)と呼ばれ,形成過程の肺の局所的な発生停止と考えられている。

この疾患が重要であるのは,出生前や出生直後に重篤な病態を呈することがあるためで,子宮内胎児死亡や新生児呼吸不全の原因となる。先天性囊胞性肺疾患は,以前には幼児期以降に反復する肺炎を機に発見される場合が多かったが,近年では出生前に胎児肺の異常として発見される場合が多い。肺病変の増大は胎児循環を障害して胎児水腫をきたすため,母体腹壁外から胎児肺囊胞を穿刺して囊胞内容を吸引したり,囊胞羊膜腔シャントチューブを挿入・留置して,胎児水腫から子宮内胎児死亡に至らないようにする出生前治療も行われる。米国では胎児の開胸を行い,病変部を切除する胎児手術も行われるが,適応の決定が困難で,わが国では長く行われていない。

生下時に無症状の症例でも,幼児期初めまでに肺感染などの症状で発症する症例が多いことも明らかにされ1),発症前でも生後1歳頃までの早い時期に病変の切除を勧める意見が強くなっている。先天性囊胞性肺疾患は周産期の疾患へと移行しつつある。

【文献】

1) Kuroda T, et al:Eur J Pediatr Surg. 2016;26(1): 91-5.

【解説】

黒田達夫 慶應義塾大学小児外科教授

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