中央社会保険医療協議会薬価専門部会は10月5日、2023年度の薬価の中間年改定に向けた本格的な議論に入った。新型コロナウイルス感染症の医薬品流通への影響や後発医薬品の供給不安への対応も求められることから、この日は、厚生労働省医政局の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の検討内容や、今後予定される関係業界のヒアリング結果もふまえながら、議論を深めていく方向性を確認した。
部会の今後の議論では、▶改定対象品目の範囲、▶既存医薬品の薬価算定ルールの適用範囲、▶調整幅のあり方、▶薬価引き下げ財源の取り扱い―などが焦点になる見通し。前回、21年度の中間年改定では、薬価と市場実勢価格の乖離率が5%を超える価格乖離の大きな品目を改定対象とし、薬価算定ルールについては実勢価改定と連動するもののみが適用された。
改定対象品目について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、中間年改定は通常改定とは位置づけが異なるとして、前回同様、価格乖離の大きな品目に限定するべきだと主張。薬価算定ルールの適用範囲では、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の累積額の控除と、長期収載品の薬価の後発医薬品への置き換え率に応じた段階的引き下げの適用を強く求めた。さらに調整幅の見直しも求めたが、これには診療側の長島委員が反対姿勢を示した。
薬価引き下げ財源の取り扱いで支払側と診療側の意見が対立する場面もあった。診療側の長島委員は、16年12月に四大臣が合意した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に、国民負担軽減とともに、医療の質の向上を実現する観点から抜本改革に取り組むとの記載があることに言及。「医療の質の向上には効率化も必要だが、財源も必要。診療報酬との密接な関係を前提に議論を重ねる必要がある」と述べた。これに支払側の松本委員は、「薬価改定の財源を診療報酬(本体)に充当するという趣旨であれば明確に反対する」と釘を刺した。