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【識者の眼】「妊産婦への運動・トレーニングupdate」重見大介

No.5145 (2022年12月03日発行) P.60

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-11-25

最終更新日: 2022-11-25

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妊娠中や産褥期は、通常とは異なる状況下に置かれているため様々な点で配慮が必要となることは周知の事実です。しかし、こと運動やトレーニングに関しては、日本社会や周産期医療者の中での認識が世界の動向とややズレているように感じることが少なくありません。

まず、日本産科婦人科学会による診療ガイドライン(2020年版)では、「妊娠中の運動(スポーツ)について尋ねられたら?」という項目において「妊娠中に行う運動は有酸素運動が望ましい」「禁忌のない妊婦における適度な有酸素運動(スポーツ)には、早産や低出生体重児などの母児罹病を増やすことなく健康維持・増進に寄与することが期待できる」といった文言が記載されています1)。しかし、筋力トレーニングについて、骨盤底筋への影響、産褥期の再開に関する記載は認められません。

一方で、海外の学会や公的機関(米国ACOG、豪州RANZCOG、カナダSOGCなど)では、有酸素運動に加えて筋力トレーニングも推奨としており、できればこれらを組み合わせることでメリットが最大化されるとしています。骨盤底筋トレーニングについてもしっかり記載しているものが多く、また産褥期についても「適切な形であれば分娩後に再開可能」としているものが多いです。以上から、海外では日本に比べてより積極的な運動(スポーツ)・筋力トレーニングを推奨している傾向があると言えるでしょう。

もちろん、人種による身体的な差や文化的背景を考慮する必要はありますが、国際的に「妊娠中や産後の運動・トレーニングの安全性や有効性」は数多くの研究で示されており、「運動・トレーニングをしないデメリット」にも目を向け、妊産婦に適切な情報提供をできるよう、知識・情報のアップデートや多職種連携を進めていくことが望ましいと考えます。

【文献】

1)日本産科婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン産科編2020. CQ107. 日本産科婦人科学会, 2020, p99-101.

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[有酸素運動][筋力トレーニング]

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