患者の価値観を重視する社会的要請と、根拠に基づく医療(以下、EBM)の普及によって明らかにされてきたエビデンスが不十分な医療行為の存在から近年、インフォームドコンセント(以下、IC)を補う新たな意思決定の方法、そして合意形成の手法として、Shared decision making(以下、SDM)が注目されている 1) 。SDMの日本語訳には、「協働的意思決定」や「患者参加型医療」などが当てられる場合があり、それぞれ重要な意味を含んでいるが、ここでは原語の“shared”を重視して「共有意思決定」としておきたい。
SDMの研究は、海外では非常に活発になっており、近年発表される論文数はICに迫っている(図1)。一方、国内の文献は極めて少なく、まさに今後の発展が強く期待されるテーマと言える。本稿ではSDMの示す医療の新しい課題と可能性を考える一助となることを願い、ICとの相違について解説する。
患者と医療者が治療や評価の方針を決定する場合、患者の意思を反映させることは重要であり、その代表的な方法であるICは、医療者が勧める治療に対し、適切な情報開示の上でなされる患者の自発的な受託と定義されている2)。
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