政府が2月、新型コロナウイルス禍で深刻化する孤独・孤立問題の対策室を内閣官房に新設した。コロナ禍で幅広い世代に広がる孤独・孤立にどう対処すべきなのか。東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム研究部長の藤原佳典氏に聞いた。
私たちの研究グループは以前、日常生活に問題がなく健康な65歳以上の高齢者1023人を対象に、社会的孤立と閉じこもり傾向の影響を調査しました。その結果、社会的孤立と閉じこもり傾向が重積している高齢者は、どちらも該当しない人たちに比べて、6年後の死亡率が2.2倍に高まりました。この研究では、同居家族以外との対面・非対面(電話やメールなど)のコミュニケーション頻度が合計週1回未満の人を「社会的孤立」。買い物、散歩、通院など外出頻度が1日1回未満の人を「閉じこもり傾向」と定義しました。
高齢者の場合、孤立に伴うコミュニケーションの欠如と、閉じこもり傾向に伴う身体・認知・精神的不活動はフレイルの原因にもなり、相乗的に健康状態に悪影響を及ぼします。
ただし、コロナ禍で女性や若者の自殺が増えている背景には、貧困、失業、家族との不和、リモート授業が続いていて大学へ行けないなど、様々な社会的要因があります。女性や若者の自殺は単に、孤独・孤立をなくせば減るというものではなく、高齢者の対策とは分けて考える必要があると思います。