No.5158 (2023年03月04日発行) P.60
土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)
登録日: 2023-02-07
最終更新日: 2023-02-07
以前の当コラム「かかりつけ医とオンライン診療」(No.5138)では、オンライン診療について「在宅医療の一歩手前のフェーズ、つまり通院困難になった患者への有用性が高い」と書いたが、もちろん在宅医療においても必要なツールになってくると考えている。
筆者は在宅医療における多職種連携ツールとしてエンブレース社の「メディカルケアステーション」を使っている。この有料プランで利用できるビデオ/音声通話機能を用いて、看護師が訪問した際にD to P with Nとしてオンライン診療を行っており、多職種連携の延長としてオンライン診療を行えるため重宝している。対象となる患者像は、もともと状態が安定しているため月1回の訪問診療を行っていた際に、徐々に状態が不安定になってきたタイミングで月1回のオンライン診療を追加するケースや、月2回の訪問診療を行っていた際に、状態が安定してきたタイミングでその1回をオンライン診療に変更するケースがある。いずれにせよ在宅医療においてはオンライン診療だけで完結することはなく、必ず訪問診療もしくは往診といった対面診療と併せて行うことが重要である。そして、今後は緊急時等に訪問した看護師が患者を支援する形でのオンライン診療も一般的になってくるだろうし、そこに薬剤師も加わり、診療〜処方〜服薬指導まで一連の流れで行う取り組みも進んでくるだろう。
このような在宅医療とオンライン診療を融合させる取り組みが進んでくれば、医師の負担軽減も医療費削減もできるメリットがあり、2022年度診療報酬改定でもそのように誘導していきたい思惑があるように感じている。さらにD to P with Dといった形で、在宅医療を行っている医師と病院医師などの専門家がつながる仕組みも一般化してくると在宅医療の質も高まるだろう。
しかし、現実はそう簡単ではないかもしれない。かかりつけ医に来て欲しいお年寄りもいる。オンライン診療を行うことにかえって負担を感じる在宅医もいる。ICTアレルギーの訪問看護師もいる。地域連携を行わない病院医もいる。関わる職種の見ている方向性やニーズは必ずしも一致していないと感じている。新たな取り組みを進めていくときにはしばしば経験することだとは思うが、今後適切な方向に議論が進み、より良い医療への一歩となっていくことに期待したい。
土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[オンライン診療]