1 成人の溶血性連鎖球菌感染症はcommon disease
溶血性連鎖球菌感染症(以下,溶連菌と略す)の診断で頻用されているCentor scoreが,溶連菌の診断率を下げる原因になっている。
大人の溶連菌は,common diseaseである。
2 咽頭所見のみに注目すると溶連菌の70%を見逃す
Centor scoreに準じて咽頭,扁桃,頸部の他覚所見にのみ注目すると,約70%の症例を見逃す可能性がある。また,扁桃に白苔付着があっても溶連菌とは限らない。
心窩部に加えて下腹部に圧痛を認めれば急性胃腸炎の可能性が高まるが,心窩部圧痛のみの場合は溶連菌の可能性が高まる。
3 溶連菌の問診は発熱よりも自覚症状を重視
Centor scoreの発熱基準を順守すると約70%の溶連菌を見逃してしまう。
50歳代,60歳代の溶連菌の確定診断では,発熱よりも自覚症状を重視した問診がより重要である。
4 実臨床における溶連菌の多彩な症状
成人における溶連菌の症状は,COVID-19あるいはインフルエンザの症状に酷似する。
小児,成人にかかわらず,消化器症状(悪心,嘔吐,腹痛,下痢)を伴う溶連菌の診断では急性胃腸炎との鑑別が重要である。
5 溶連菌は気管支喘息の新規発症を誘発する
溶連菌は,気管支喘息の新規発症を誘発し,気管支喘息発作をも誘発するため,咳嗽を伴う溶連菌は多く存在する。
6 感冒初期の葛根湯投与には意義がある
10〜60歳未満が,感冒症状発現後の病初期に葛根湯を早期内服することには意義がある。
7 「年齢」「葛根湯前投与」で有意差─多変量解析結果
葛根湯内服後の迅速検査結果判定では「偽陰性」に注意が必要である。
年齢の上昇とともに,溶連菌の感染リスクは徐々に軽減する。
8 溶連菌の診断 7つのアプローチ
診断において見逃しが多い原因として,「発熱」がなく,「咽頭発赤」や「白苔を伴った扁桃腫大」もない溶連菌が多いことが挙げられる。
確定診断への近道として,「症状の多様性を知る」ことなど7つのアプローチ法を推奨する。
9 溶連菌の第一選択薬はペニシリン
第一選択薬はペニシリン(サワシリン®)である。
ペニシリンが投与できない場合を含め,3通りの処方例を示す。