在宅医療において,良好なコミュニケーションをとることは,在宅医療のアウトカム(安心,満足,納得等)の大部分を決定すると言っても過言ではない。
まず基本としては,患者と家族に対するリスペクトを言葉や態度で示すことである。適切な服装,礼節や,環境調整(静かな環境をつくる,話す相手によって場所を調整する等)を行う。ごまかしをしないことや嘘をつかないことも重要である。話す口調にも注意を払う。穏やかで優しいこと,相手を尊重していることが伝わるように話す。医療者として上からの目線にならないように注意し,フラットな関係性で対話するように心がける。
患者や家族の話を傾聴することは重要である。大切なことは,在宅医療者が相手の話を強い関心を持って聴いているということを相手に伝えることである。相づちを打つ,相手の目を見つめる,相手の話を繰り返す(オウム返し,反復,ミラーリング等と呼ばれる)ことも有効である。患者が「ここが痛かった」と訴えたとしたら,「ここが痛かったのですね」と繰り返す。さらに,後述する「共感」や「ポジティブ・フィードバック」につなげるとさらに効果的となる。
オープン・クエスチョンを使用する(Yes/Noで答えられない質問)。さらに,質問をするときに言葉をできるだけ選ぶことも重要である。「死」→「旅立ち」,「不安なこと」→「気がかりなこと」,「せん妄」→「夢と現実が入り乱れている状態」等,わかりやすく,不安をあおらないものに言い換えることが望ましい。
共感する際には,できるだけ相手の感情に焦点を当てることが重要である。「つらかった」「心細かった」「悲しかった」などの感情を取り上げて,その感情が自然であることを伝える。たとえば「抗癌剤の治療中は体だけではなく,気持ちの上でもつらかったのではないですか」等,体のつらさ以外に感情としてのつらさも共感の対象として取り上げることも効果的である。さらに,「お気持ちわかります。当然の感情ですよね」等,その感情が理解可能であることを伝える。
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