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【識者の眼】「国は類型変更後の感染リスク増について説明を」松村真司

No.5165 (2023年04月22日発行) P.57

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2023-04-12

最終更新日: 2023-04-12

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2023年5月8日をもって、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが現在の2類相当から5類に移行される。現在地域ごとにその準備が進められ、順次具体的な内容が発表されている。現時点で政府は、高額な治療薬に関する公費負担や地域ごとの入院調整機能は当面継続するなど、一定の移行期間を設けることを明らかにしている1)2)

類型変更に伴い、政府は幅広い医療機関で新型コロナウイルス感染症の患者が受診できる体制を構築することを目標にしているようである。しかし、現場においては様々な問題が生じることが予測され、目論見通りに行くとは思えない。そもそも、外来で私たちが対応しているのは、「発熱患者」あるいは「体調不良者」であり、その中に新型コロナウイルス患者が含まれているのである。これまでも一部の患者は「自分はコロナ感染者ではない」と強く主張し、通常の対応を求めて問題となることをたびたび経験してきた。強くコロナ感染が疑われる状況でも、直接来院する人は後を絶たず、ゾーニングに苦労してきた医療機関は少なくないことであろう。

もちろん、体調が悪くなった際に、すぐに受診し、診断を受け、適切な治療を受けたいという思いは当然のものである。そして、この点においてコロナ禍前のわが国の医療体制は世界に誇ることのできる優れたものであった。感染対策のためにこれらの期待に十分応えられなかったこの3年の間に多くの不満が生まれたのも理解できるところである。しかし、これまでと同様のアクセスを求めることで生じる感染リスクの増加についてはどのように考えればよいのか。それに対する対策はどのように行っていけばよいのか。応招義務を盾に、診療体制の整備をただ求めるだけでは事は進まないだろう。

既にこの3年で疲弊した医療スタッフにさらなる負荷をかけることを避けるため、何らかの説明が行われることを国には少なくとも求めたい。これまでのように「現場に丸投げ」の状態だけは避けてほしいものである。

【文献】

1)内閣官房新型コロナウイルス感染症対策本部:新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について.(2023年3月10日)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_r_050310.pdf

2)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント).(2023年3月10日)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_r2_050310.pdf

松村真司(松村医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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