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【識者の眼】「『コロナ禍で子どもの感染症が増えている』をどう考える?」坂本昌彦

No.5175 (2023年07月01日発行) P.54

坂本昌彦 (佐久総合病院・佐久医療センター小児科医長)

登録日: 2023-06-15

最終更新日: 2023-06-15

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新型コロナウイルス感染症が5類となって1カ月が過ぎました。最近よく目にするのは「子どもの感染症の増加」のニュースです。コロナ禍の厳重な感染対策によってコロナ以外の感染症も抑えられてきましたが、感染の機会が減ったことで免疫獲得が不十分だった子どもたちの感染が増えているのでは、と考えられています。ネットには「コロナの感染対策は子どもたちにはデメリットが大きかったのでは」等の論調もあり、気になります。保護者の中にも「コロナ禍の感染対策の影響で自分の子どもは弱くなったのでは」という不安を訴える方も見られます。このような状況を私たちはどう捉えればよいのでしょうか。

小児科医の立場からは、こうした変化は、自宅で過ごしていた乳幼児が保育園などに入園し、集団生活を始めて様々な感染症に罹患する経過と似ている印象を受けます。感染症に罹患することで、子どもたちは必要な免疫を獲得します。その結果、風邪をひく頻度も減り、乳幼児期に年に5〜6回ひく風邪も、就学前には2〜3回に減っていきます。人はいずれ集団生活をしなくてはいけない以上、集団生活で感染症に罹患することは避けて通れない通過儀礼のようなものと言えます。

そうはいっても、保育園に通い始め、風邪を繰り返すわが子を前に、「何か免疫の病気があるのでは」と心配される保護者も少なくありません。実際には入院を繰り返すような重い感染症を繰り返すのでなければそれほど心配する必要はないのですが、見通しを説明すると安心につながります。フィンランドの研究によれば、集団生活を始めると1カ月当たりの感冒症状のある日数は増加し、入園2カ月後でピークとなりますが、その後は徐々に収束し、9カ月〜1年後にはほぼ差がなくなると報告されています。外来の肌感覚もそれに近く、そうした説明で安心される保護者も少なくありません(「1年もですか……」と絶句される方もたまにいらっしゃいますが)。

話を戻すと、今回の5類移行後の子どもの感染症増加も、保育園の話と同様に考えてよいのではないでしょうか。子どもたちの免疫が弱くなり、今後もずっと病気になりやすい体になってしまったのではなく、コロナ後の社会に戻る一時的な過程を見ているわけですね。

この数週間、子どもの感染症が急増した結果、小児医療の現場は逼迫しています。このようなときだからこそ、子どもの受診の目安「普段と比べてぐったりしていないか」「水分が摂れているか」を冷静に確認すること、そして必要な予防接種をしっかり済ませることの大切さを強調したいです。そしてコロナ禍を通じて広まった手洗いなどの基本的な感染対策はこれからも続けていきたいものです。

坂本昌彦(佐久総合病院・佐久医療センター小児科医長)[コロナ後の社会][免疫獲得]

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