「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」
医師法第一条にはこう謳われている1)。コロナの第9波を迎えるにあたり、5類感染症となって、その罹患や疑いを理由に診療を拒否することができないことも明示された。今後感染者が増えた場合でも、すべての医療機関が診療はもちろん、感染対策の指導を適切に行うことで、さらなる感染の拡大と医療崩壊を防がなければならない。
その上で大切なことは、コロナが空気感染であり対策上は換気と空気清浄機の活用が最も重要であること、症状だけではコロナか否かは判断できないこと、そして、検査は一度陰性となっただけでコロナを否定するものではないということを、しっかりと医師から患者や市民に知らせることであろう。さらには、日々更新される知見や新たな変異株の情報など、医師も情報のアップデートに努めながら、適切に患者・市民に指導・啓発を行う必要がある。
日本在宅医療連合学会新型コロナ対策ワーキンググループは、先日「在宅医療における新型コロナウイルス感染症対応Q&A」の改訂第6版を公開した2)。「在宅医療における」と銘打ってはいるが、自宅療養が主体となった現状ではすべての人に向けた感染・療養の知識が盛り込まれている。
また、この中にも掲載されているが、地域共生全国ネットも、「コロナ対策アップデート2023」を公開した3)。イラストを用い、一般の人にもわかりやすくポイントを解説したもので、リンクを共有したり、印刷して配布することも可能となっている。
冒頭に挙げた医師法では、続く第一条の二において、「国、都道府県、病院又は診療所の管理者、学校教育法に基づく大学、医学医術に関する学術団体、診療に関する学識経験者の団体その他の関係者は、公衆衛生の向上及び増進を図り、国民の健康な生活を確保するため、医師がその資質の向上を図ることができるよう、適切な役割分担を行うとともに、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない」という記載も見受けられる1)。行政・医療機関が連携・協力して感染対策を行うことは、5類になっても求められることであり、第9波でこれを確立することは、なくならないコロナに対応しながら社会を維持するための試金石といえるだろう。
【文献】
1)E-Gov法令検索:医師法(昭和23年法律第201号).
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201
2)日本在宅医療連合学会:在宅医療における新型コロナウイルス感染症対応Q&A (5類移行後の感染症対策)(改訂第6版).
https://www.jahcm.org/assets/images/pdf/covid19_v6.0.pdf
3)NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク公式サイト:コロナ対策アップデート2023.
http://sasaeru-net.org/covid-19.html
小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[医師法]