【概要】安倍晋三首相は10日、例外的に混合診療を認めている保険外併用療養費制度の新たな仕組みとして「患者申出療養制度」(仮称)を創設すると表明した。2016年度からの実施を目指す。
「患者申出療養制度」は、患者からの申出に応じて、国内未承認の医薬品・機器や承認済の医薬品・機器の適応外使用などを迅速に保険外併用療養として使用可能にするもの。患者の治療の選択肢を拡大するのが目的とされている。
実施までの流れとしては、前例のある治療の場合、患者から治療の相談・申出を受けた臨床研究中核病院あるいは同病院と連携する身近な医療機関が、前例を取り扱った臨床研究中核病院に申請し、原則2週間後には患者が受診できるようにする。前例のない治療の場合は臨床研究中核病院が国に申請。原則6週間で国が実施の可否を判断する。申出の前提として、医師が治療の内容や安全性・有効性などを患者に対し十分な説明を行い、患者が理解・納得していることが要件となる。懸念される安全性・有効性については、専門家会議で確認するとしているが、細かい制度設計は今後詰めていく方針。
混合診療の拡大を巡っては、規制改革会議が医師と患者が合意した治療について幅広く保険外併用を可能とする「選択療養」の導入を提案していたが、安全性の観点から厚労省が難色を示したこともあり、新制度は性格が異なるものとなった。
安倍首相は10日の慶應大学病院視察後、「患者本位の新たな制度を作ることで、より迅速に必要な医療を身近な場所で受診できるようにしたい」と新制度創設を表明、「最終的には保険適用を目指す」とのスタンスを示した。政府は2016年度の実施を目指して、今月下旬の新成長戦略に制度案を盛り込み、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。
●自民党は「薬価の毎年改定」に反対多数
一方、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針2014」を巡っては、薬価の適正化に向け薬価改定を毎年度実施すべきとの提言を盛り込む方向で、検討が進められている。甘利明経済再生担当相は9日の会見で骨子案を示し、「その名の通り『やっかい』な話ではあるが、取り組んでいかなければならない」と述べた。
これに対し、11日に開かれた自民党の政調全体会議・日本経済再生本部の合同会議では、薬価の毎年改定に反対する意見が相次いだ。丸川珠代元厚労政務官は「早く妥結すると薬価が高止まりする恐れがあり、労多くして益少なしという結果になりかねない」と指摘。尾辻秀正元厚労相も「財務省は今回の改定で薬価引下げ分を本体に充てず火事場泥棒のようなことをした。その上、薬価の毎年改定など絶対に許してはいけない」と訴えた。会合に出席した甘利担当相は「十分検討させていただく」と述べるにとどまり、方向性についての明言を避けた。経済財政諮問会議は月内にも骨太の方針をまとめる方針だ。
【記者の眼】「患者申出療養制度」については、実績のない治療に関しても審査期間が6週間と短く、安全面での懸念が拭えない。政治色の強い成り立ちとなった同制度において、当該治療の審査を行う「専門家会議」の独立性が重要になる。(T)